すくい投げで照ノ富士(右)を破った大の里=両国国技館で2024年5月12日、幾島健太郎撮影

大相撲夏場所初日(12日、東京・両国国技館)

○大の里(すくい投げ)照ノ富士●

 入場券が15日間完売の夏場所で、大入りの国技館に広がったのは上位力士が次々と黒星を重ねる光景だった。

 大関陣が4連敗した後の結びの一番。春場所途中休場の横綱・照ノ富士は、新小結・大の里に完敗した。横綱・大関陣がすべて出場して初日から総崩れとなるのは、昭和以降では初の「失態」だ。

 もろ差しで寄って出た大の里の右腕を小手に振ったが、こらえた相手に最後はすくい投げを決められた。支度部屋で照ノ富士の対応は、なし。詰めの甘い取り口に「我慢できなかった。焦ったよね」と評する八角理事長(元横綱・北勝海)の言葉がすべてだった。

 脇腹痛で調整が十分ではなく、照ノ富士いわく「ぶっつけ本番」で臨んだ今場所。一方の大の里は、上手投げで屈した新入幕の初場所以来の照ノ富士戦に思うところがあったという。「(初場所は)めちゃくちゃ走ることだけ考えていた」。がむしゃらに攻めるだけだったことを反省し、今回は投げを打たれてからも攻め手を失わない姿勢が功を奏した。

 場所前の稽古(けいこ)は横綱審議委員会の稽古総見も含め、低調だった。大関陣も指しながら、八角理事長は「気合を入れてやってもらいたい」と嘆く。盛況に水を差す相撲の連続に、「申し訳ない」とまで口にした。

 コロナ明けの相撲人気も、八角理事長がこの日土俵上であいさつしたように「熱戦」あってこそだ。その行方が心配になってしまいそうな、初日の国技館だった。【岩壁峻】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。