「一人だけレギュラー(国内女子)ツアー選手がラウンドしているようだ」「無敵と言われたゴルフは、まだまだ健在」――。同伴競技者らが口々に称賛する中、全盛期同様の淡々としたプレースタイルを貫いた。
日本女子プロゴルフ協会の国内ツアー大会で通算50勝の不動裕理選手(47)が、4月26、27日にあった45歳以上の協会会員選手によるシニア(レジェンズ)ツアーの今季第2戦「太陽生命元気・長生きカップ」(千葉市、東急セブンハンドレッドクラブ東コース)=36ホール=で優勝した。
不動選手は、この大会がレジェンズツアー初参戦。27日の最終ラウンドを首位と4打差の1アンダーでスタートするとボギーなし、10バーディーで回り、従来のツアー記録を2打縮める62ストロークのツアー新記録をマーク。通算11アンダーでの鮮やかな逆転で初勝利を飾った。
最終ラウンドは圧巻だった。1番ホール(パー4)の第3打、グリーンエッジから約10メートルのアプローチショットを直接入れると、4番まで4連続バーディー。後半12~14番にも3連続バーディーを奪った。2日間でティーショットがフェアウエーから外れるホールはなし。直近大会などで「ショットは悪くないがグリーン上でラインが見えていないし、しっかり打てていない」とこぼしていたパットも劇的に改善させた。
最終18番(パー5)では約3メートルを沈めてツアータイ記録の1ラウンド10個目のバーディー。ホールアウト後に「何度も一緒にラウンドしていた先輩から『以前と比べ、ちょっと体が浮いている感じがする』と指摘され、前傾姿勢を崩さないパッティングを心がけた。ボールの重さを感じて打つことができた」と振り返った。
熊本市出身で10歳からゴルフを始め、1996年にプロ入り。99年に国内女子ツアーで初優勝すると、翌00年から6年連続で賞金女王の座を獲得した。11年東日本大震災後、再開したツアーで出場2試合連続優勝を果たして通算50勝に届かせた。
ゴルフの驚異的な正確性や勝負強さ、故障のない丈夫な体だけでなく、プロ入り時の抱負で「ちゃんとあいさつのできるプロになりたい」と話した生真面目さは、脇目も振らずにゴルフ練習に打ち込む姿勢にもつながり、同年代や後輩ゴルファーの「憧れ」の存在にもなった。
30勝以上の選手に与えられる永久シードを獲得し、国内ツアー全大会に出場する資格を持つ。プロ20年目の15年以降は年間10試合前後の出場に絞ったが、今季これまでの3試合は、全て予選落ち。そんな時に先輩ゴルファーらに参加を勧められたのが04年開始、08年に改称したレジェンズツアーだった。「自分よりずっと年上の先輩が、持ち前の技術を駆使していた。誘われ、参加してみたら久々に楽しくゴルフができた」と不動選手。
1ラウンドを62ストロークで回ったのはアマチュア時代を含めて自己ベストだという。「きょうできたことが次のゴルフにつながらないことも、よくあるし、舞台も違うので、まだ『復活』とは思っていない。でも47歳で自己ベストを更新できた。知らず知らずにしていたかもしれない『年齢相応のゴルフ』を捨てて『私、まだまだ若い』と思ってプレーしたい」
初参加のレジェンズツアーで得た確信を糧に今季はレギュラー、レジェンズツアーを問わず、出場試合を例年より増やすことも考えている。次戦の国内メジャー大会、ワールド・サロンパス・カップ(5月2~5日、茨城県つくばみらい市、茨城ゴルフ倶楽部東コース)はカットラインに1打及ばす予選落ちしたが、国内女子ゴルフ界の「レジェンド(伝説的)選手」が、もう一度輝く日は近いかもしれない。【熊田明裕】
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