海上自衛隊の護衛艦「いずも」を空撮したとされる動画のスクリーンショット。画面の左上に中国の動画共有サイト「bilibili」との表記がある

 海上自衛隊最大のヘリコプター搭載型護衛艦「いずも」をドローンで撮影したとされる動画がネット交流サービス(SNS)上で拡散された問題で、防衛省は9日、動画は捏造(ねつぞう)ではなく、「実際に上空から撮影された可能性が高い」との分析結果を公表した。「ドローンで危害が加えられた場合、防衛に重大な支障が生じかねない」とし、対処能力の高い装備品の早期導入や、違法行為への厳正な対処を徹底することも明らかにした。

 動画は18秒で、ドローンが神奈川県の海自横須賀基地に停泊中の「いずも」の後方から近づき、甲板の上を前方に向かって飛行しながら撮影したような様子が映っている。防衛省によると、3月26日、中国の動画共有サイト「bilibili」に投稿され、その後、X(ツイッター)に転載されたという。

 防衛省は、悪意を持って加工・捏造された可能性を含め、動画と実物との比較など分析を実施。その結果、艦番号の一部が見えないことも含めて不自然な点はなく、違法に撮影された可能性が高いと判断した。

海上自衛隊最大のヘリコプター搭載型護衛艦「いずも」=神奈川県の海自横須賀基地で2024年2月16日午後2時41分、松浦吉剛撮影

 横須賀基地は、ドローンを許可なく飛行させることが禁じられた防衛関係施設の一つ。飛行を探知したり、操縦用の電波を妨害したりする装備品を備えている。防衛省は今回の飛行を探知できたのかは明らかにせず、「対処はしていない」と説明。撮影者や撮影意図については言及しなかった。

 防衛省は分析結果の公表に合わせ、自民党の国防部会・安全保障調査会合同会議で説明した。参加議員からは「非常にゆゆしき事態。あってはならない」「調査に時間がかかりすぎている」などと早急な対応を求める意見が相次いだ。

 「いずも」は基準排水量1万9950トンで全長248メートル、幅38メートル。F35Bステルス戦闘機を搭載するための改修工事が進められている。

海上自衛隊最大のヘリコプター搭載型護衛艦「いずも」=神奈川県の海自横須賀基地で2024年2月16日午後0時15分、松浦吉剛撮影

 海自の施設を巡っては、広島県呉市の海自呉地方総監部の上空でドローンを飛ばしたとして、県警が2019年11月、小型無人機等飛行禁止法違反の容疑で男性を書類送検した例がある。【松浦吉剛、中村紬葵】

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