若者を中心に利用が増加しているというオンラインカジノ=2022年5月撮影(画像の一部を加工しています)

 オンラインカジノで賭博をしたとして常習賭博罪に問われた男性の判決で8日、水戸地裁は懲役1年、執行猶予3年(求刑・懲役1年)の判決を言い渡した。今後も「恐らくやっている」――。賭博行為を動画で配信もしていた男性は裁判で、ギャンブル依存を断てない自身についてそう告白した。【西夏生】

 判決によると、東京都台東区、自営業、藤野正一被告(49)は2022年11月1~26日ごろに計41回カジノサイトにアクセスし、トランプの合計点で勝敗を争うバカラに530万円超を賭けるなどした。裁判で明らかになった犯行様態を有賀貞博裁判官は「常習性は顕著で、動画配信して報酬をもらうためという動機に酌むべき点はない」と指弾した。

 4月23日の初公判に出廷した藤野被告は背中を丸めて「留置場生活は想像の10倍つらい」と漏らしつつ、賭けを続けた半生を赤裸々に証言した。

 賭け事との出合いは20歳の時。当初は競馬や競艇などの公営ギャンブルに夢中になった。17年から、興じる様子や競馬の予想を動画投稿サイト「YouTube(ユーチューブ)」で配信するように。チャンネル登録者数は10万人を超え、記者(西)がのぞくと、「末期のギャンブル依存症男」とサムネイルに書かれた4年前の競馬動画は100万回近く再生されていた。

 同じ建物に住む両親が経営する内装業で職人になり月20万円弱の給料を渡されていたが、動画配信で月25万円ほどの収入を得られるように。ここ2年ほどは内装業の現場に顔も出さなかった。

 「もっと登録者数を増やしたかった」。オンラインカジノに手を出した動機を検察官に問われると、そう答えた。22年4月からバカラ賭博にはまり、実況付きで配信した。過激な配信内容と比例するようにチャンネル登録者数は増えた。逮捕と勾留で配信が止まっているにもかかわらず、今月8日午前10時時点で登録者は約12万4000人を数える。

 違法性は認識していたというが、有名人が出ている広告を見て「大丈夫と思った」。賭客の間で「起訴された例が1件も無い」という言説が広まっていたことにも背中を押された。

 手にできる金額も魅力だった。「カジノは競馬などに比べ、金額が返ってくる可能性が大きい」と語った。損失が出ても「取り返せるという頭(考え)の方が強く」賭け続けた。もうけも全て賭けに突っ込み、賭けた総額は計約10億円に上る。

 底なし沼から抜け出せなくなる仕組みもあったと検察側は明かした。動画を見てアクセスした人の賭け金の一部がカジノサイトの運営側から支払われたのだ。「成功報酬」として半年間で2億~3億円を受け取った。

 だが23年9月、流れは変わる。同じくオンラインカジノのプレーを配信していた動画投稿者が逮捕されたのだ。藤野被告は、注文した覚えのない商品が自宅に届くなどの嫌がらせを頻繁に受けるようになり、12月にタイへ出国。24年2月末に帰国したところ、県警に常習賭博容疑で逮捕された。帰国直前までスマートフォンからオンラインカジノに賭け続け、残ったのは約8000万円の損失だった。

 検察官に「今後ギャンブルを断つことができるか」と問われた被告は、絞り出すような声で答えた。「今『やらない』と言ったとしても、恐らくやっている自分がいるかな。日本ではやらない」

生活に支障が生じたら相談を

 ギャンブル依存症の怖さは、米大リーグ、ドジャースの大谷翔平選手の元通訳による違法賭博容疑でも浮き彫りになった。日常生活や社会生活に支障が生じる場合、治療が必要で、県内では県精神保健福祉センター(029・243・2870)といった相談窓口がある。

 また海外で合法的に運営されているカジノであっても、日本からアクセスすれば刑法に抵触する。警察庁はホームページで過去の検挙例や検挙数を示して「国内でオンラインカジノに接続し賭博することは犯罪」と警鐘を鳴らしているが、県警幹部は「スマホゲームぐらいの感覚で課金している人もいるかもしれない」と憂える。

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