原爆で倒壊し、1959年に再建された浦上天主堂=長崎市本尾町で2019年11月15日午後0時6分、田中韻撮影

 イスラエルによるパレスチナ自治区ガザ地区への激しい報復攻撃が続くなか、双方につながりのあるオルガン奏者が5日、長崎市の浦上天主堂でパイプオルガンの演奏会を開く。イスラエル国籍でアラブ人のヤクーブ・ガザウィさん(35)。原爆が投下された長崎から平和の重要さを訴えるとともに「宗教や人種が異なっても互いに敬意を払い、対話する大切さを発信したい」と意気込んでいる。

 エルサレム出身のヤクーブさんは、同地の主要キリスト教会のオルガン演奏を担当している。日本との縁も深く、イスラエルやパレスチナの子どもたちの教育を支援する認定NPO法人「聖地のこどもを支える会」(東京都)の現地スタッフを務める。その運営やガザ支援の資金を集めるため、日本のキリスト教会を主な会場にオルガン演奏会を2017年から開いてきた。

エルサレムの「聖墳墓教会」で演奏するヤクーブさん=聖地のこどもを支える会提供

 今回、長崎で演奏に臨むのは、その地に特別な思いがあるからだ。支える会は05年から「平和の架け橋プロジェクト」を実施している。対立で交流が困難なイスラエルとパレスチナの若者を日本に招き、平和について一緒に学んでもらう取り組みで、ヤクーブさんも16歳の時、このプロジェクトに参加して長崎を訪問した「卒業生」だ。

 長崎では原爆資料館を訪れ、原爆による破壊のすさまじさを知り「感情が激しく揺さぶられた」。がれきに覆われた長崎の姿は、爆撃で半分以上の建造物が損壊されたとされるガザ地区の現状と重なって映る。

 長崎での演奏に選んだ曲目の一つは「黄金のエルサレム」。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖地で「平和の町」とも言われるエルサレムをたたえる曲だと考えている。

「平和の架け橋プロジェクト」で初めて来日し、広島で参加者らと交流するヤクーブさん(2列目左端)=2005年撮影(聖地のこどもを支える会提供)

 ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスなどが23年10月にイスラエルを越境攻撃した後、ガザ地区にはイスラエルによる報復攻撃が激しい。空爆や地上侵攻によって、これまでに約3万4000人が死亡し、約170万人が家を追われた。「罪のない民間人が犠牲になってはならない。信頼があれば対話は可能だ」と強調するヤクーブさん。演奏を通じ、宗教や人種を超えて平和のために連帯する大切さを訴えるつもりだ。

 演奏会は入場無料で、午前10時40分から。11日に福岡市、12日に熊本市でも開催する。問い合わせは、支える会の井上弘子理事長(090・6538・3255)。【和田浩明】

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