3種のウニとマグロやイクラなどが盛られた「築地うに虎」の丼=東京都江東区豊洲の「豊洲 千客万来」で2024年5月1日午前10時39分、山崎明子撮影

 東京で「味」と「映え」を堪能できるメニューとして海鮮丼に注目が集まっている。豊洲市場に隣接する観光施設「豊洲 千客万来」では2月のオープン当初、高価格帯の海鮮丼が話題となったが、初のゴールデンウイーク(GW)を迎えて、さらなる関心の広がりを見せている。

 「千客万来」は築地市場の豊洲への移転に伴って、にぎわいの継承を目的として整備された。江戸の町並みを再現した商業施設の中に、市場直送の海産物を扱う飲食店や食べ歩きができる店舗、温浴施設など約70店舗が並ぶ。

 「おいしい以外になにも言えません」と満面の笑みを浮かべるのは東京近郊から来た40代の夫婦。イクラやマグロなどがこぼれんばかりに乗った7500円の「プレミアム丼」を口に運ぶ箸が止まらない。「せっかくなので、話題の高級丼を食べてみたかった」

 高価格帯の海鮮丼を注文するのは、訪日客だけではない。取材した日は日本人観光客が豪華なメニューを前に気前よく奮発している姿も目立った。テナントによると、出店当初は干物や焼き魚の定食が中心だったが、SNSなどで海鮮丼が話題になっていたことから海鮮丼を投入したところ「写真映えがする」として一気に人気商品になったという。

 近くのウニ専門店では6000~1万円台の極上ウニ丼に台湾人観光客4人組が舌鼓を打つ。「確かに値段は高いけれど、同じ物だったら台湾ではもっと高額。ここは素材が新鮮で味も雰囲気も素晴らしい」と大満足の様子だ。

 施設の広報担当者は今年のGWは日程や急激な円安などを反映し、国内の近場でちょっとしたぜいたくを楽しむ人が多いと話す。一方で円安は訪日客を呼び込む追い風と見る。初年度の入場者数目標は200万人だが、オープン以来、予想以上の来客があり、「豊洲市場と両輪で盛り上げていきたい」と意気込む。

消費者のコスパ意識ともマッチ

ウニ丼を前に、笑みがこぼれる客たち=東京都江東区豊洲の「豊洲 千客万来」で2024年5月1日午前10時45分、山崎明子撮影

 海鮮丼の波は東京駅にも届いている。豊洲市場内に店舗を構える創業115年の「海鮮丼 大江戸」は4~8月下旬の期間限定で同駅改札内の商業施設エキュート東京に出店する。「大江戸」を運営するメビウスフードナビゲーションの広報担当、石山輝子さんに海鮮丼の人気の秘密を尋ねると「コストパフォーマンスの良さがお客様の要望にマッチしたからでは。また訪日客からも海鮮丼が注目され、『自分も一回食べてみたい』と感じた人も多いのかもしれません」と分析する。

 明治時代に日本橋の魚河岸内に創業し、築地市場に移転後も場内の食堂を営んでいた同社が海鮮丼に特化したのは2000年ごろ。都営地下鉄大江戸線の築地市場駅が開業し、マグロの競りや解体が一般客も見学できるとあって市場が世界的な観光地として認知度を高めていたころだ。海鮮丼専門店は当時としてはまだ珍しく、すしと同じネタと量で作っても握らない分の技術料が抑えられ、カジュアルさもあって人気を得たという。

 エキナカ店の看板商品「頂いただき丼」(1980円)は豊洲市場内にある本店の商品をサイズそのままにテークアウト用に仕立てた商品。シャリの上に積み上げたネタが魅力。ほかにも市場らしい大ぶりに盛り付けたどんぶりや弁当を取りそろえて鉄道利用者への販路開拓を狙う。石山さんは「海鮮丼は素材が命。消費者のコストパフォーマンス意識は高いので、『ちょっといいもの』の『ちょっと』の部分を積み重ねていくことが大切だと考えています」と話している。【山崎明子】

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