雪崩事故が起きた「那須温泉ファミリースキー場」=栃木県那須町で2017年4月2日午前10時半、本社ヘリから

 栃木県那須町の茶臼岳で2017年3月、県立大田原高山岳部の生徒と教員計8人が死亡した雪崩事故について、県高校体育連盟が、事故発生の反省や再発防止策などをまとめた文書案をとりまとめていたことが2日、県高体連への取材で判明した。文書案は県高体連と登山専門部の連名。4月までに作成しており、県高体連が事故について文書をとりまとめるのは、21年以来の2度目。公表するかどうかは検討中としている。

 事故は、県高体連が主催し、登山専門部が主管した「春山安全登山講習会」の最中に雪崩が発生し、参加していた同高山岳部の男子生徒7人と引率教員1人が巻き込まれて死亡、他校の生徒ら40人が重軽傷を負った。

 県高体連によると今回の文書案は、一部の遺族が県と引率教諭3人、県高体連に損害賠償を求めた民事訴訟の判決が23年6月に出たことを受けて作成。判決では、県高体連と引率教諭3人の過失を認め、県と県高体連に計約2億9270万円の支払いを命じた。

 文書案の内容は、主に事故を引き起こした「組織としての反省」で、県高体連と登山専門部としての反省の二つに大きく分かれている。県高体連の反省としては、事前の計画が危機を想定しているとはいえず不十分だった▽教員間での(危機管理への)共通理解が不足していた――などを挙げている。7年前の10年3月にも、講習会中に生徒が雪崩に遭っていたことを踏まえ、「事故事例を計画に反映させるなどの振り返りや改善不足」も指摘している。

 登山専門部の反省としては、危機意識がまひし、危機管理体制の意識が十分機能しなかった▽大会・講習会の運営を長年継続してきたことの慣れによって安全な運営が十分に行われなくなっていた――などが盛り込まれている。

 また、事故の責任は県高体連にあるとした上で、組織改善に向けた今後の取り組みとして、危機管理マニュアルの作成と継続的な見直しや、事故の教訓を風化させないために危機管理委員会での安全管理や事故防止についての話し合い継続することなどを記載した。

 県高体連の鯉沼夏樹理事長は「民事の判決で県高体連の過失が認められたことに対して反省をとりまとめた。今後このような大きな事故を起こさないように、事故を教訓にして使命感を持って安全対策を行っていく」と話した。【今里茉莉奈】

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