将来も水道を維持・継続するために必要な料金の値上げ率は、岩手県が最大――。2046年度時点で水道事業の赤字化を回避できる料金水準を試算した民間グループの研究で明らかになった。経営基盤強化のため現在は主に自治体単位の水道事業を都道府県ごとに統合した場合でも、岩手県の61%を筆頭に、東北や四国、九州の各県で大幅な値上げが予測された。「安価な水道水」との意識を変える必要がありそうだ。
会計監査法人の「EY Japan」(東京都千代田区)と一般社団法人「水の安全保障戦略機構」(中央区)の共同研究チームが、全国1243事業者のデータと人口推計データを用いて試算した。試算は15年から3年ごとに実施している。
水道事業は老朽化設備の更新や人口減による収益悪化、人手不足などが重くのしかかり、今後は経営の圧迫が加速すると予想される。
水道事業が46年度までに赤字とならないために必要な料金改定率などを研究チームが推計したところ、値上げが必要な事業者は21年の前回調査から2ポイント増の96%となり、値上げ率は全国平均で同5ポイント増の48%にのぼった。
少数ながら値上げが必要ない事業者もある一方、最大で526%の値上げが必要な事業者もあった。21年度には最大8倍だった事業者間の料金差は46年には最大20・4倍に拡大すると推計した。
経営基盤の強化を図るため、水道事業を都道府県単位で統合したと仮定した場合の試算も実施した。
値上げ率の全国平均は38%となり、現状の自治体単位よりは軽減される。しかし、すべての都道府県で値上げは避けられず、最大の岩手県(61%)に続き、香川県(59%)▽愛媛県(55%)▽青森県(52%)▽高知県(52%)では5割以上の大幅値上げとなる。
値上げ率が小さいのは、沖縄県(15%)▽滋賀県(22%)▽東京都(25%)――などだった。
研究チームは「調査ごとに値上げ率は上昇しており、地域間格差だけでなく、将来に料金上昇のつけが回される世代間格差も確実に広がっている」と指摘。水道事業の維持・継続に向け「経営改善の実施や事業者の取り組みに対する利用者の積極的な理解が必要だ」としている。【嶋田夕子】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。