デジタルさい銭サービスを導入した浄土宗大本山増上寺=東京都港区で2024年12月23日午前11時37分、藤渕志保撮影

 年末年始を迎え、初詣や合格祈願で神社仏閣を参拝する機会が増えるが、さい銭にキャッシュレスサービスを導入するケースが急増中だ。さい銭は神や仏に対し感謝の気持ちを伝える行為。御利益が薄れるのではとの心配もあるが、神社仏閣側は「現金でもデジタルでも、気持ちを込めることが大切です」と説明している。

 東京都港区にある浄土宗大本山増上寺では今月から、PayPayでもさい銭を供えられるようになった。大殿と安国殿の2カ所のさい銭箱や柱に専用のQRコードを設置し、参拝客に読み取ってもらう仕組みだ。

 マイナンバーカードや運転免許証などで本人確認を完了したPayPay利用者限定だが、待ち時間の減少など混雑緩和の効果が期待できるという。

 神社仏閣側がキャッシュレス化を進める背景には参拝者の変化がある。現金を持ち歩かない若者も増え、小銭がないためにさい銭を諦めてしまうケースが多くなっている。

さい銭箱の付近に設置されたQRコードを読み取ると、PayPayでさい銭を供えられる=東京都港区で2024年12月23日午前11時26分、藤渕志保撮影

 隠れた利点もある。金融機関で硬貨を預け入れる際の手数料を引き上げる動きが続いている。さい銭として大量の小銭を取り扱う神社仏閣の負担は重くなっている。キャッシュレスであれば現金の回収や振り込みの手間も省ける。

 さい銭の起源は諸説あるが、中世以降の貨幣経済の進展に伴い、コメの代わりに金銭を供えるようになったのがはじまりとされる。増上寺の武智公英・参拝部長は「(デジタルさい銭は)思い立ったらすぐにできる利便性がある。さい銭は季節に関わらない供養の形であり、欲を捨てる修行の側面もある。その気持ちは現金でなくても変わらない」と話している。

 PayPayによると、川崎市の稲毛神社や名古屋市の東別院など増上寺を含め全国7カ所で年内にPayPayのデジタルさい銭が導入される。

 みずほ銀行のスマホ決済サービス「Jコインペイ」でもデジタルさい銭サービスが始まっている。愛知県豊川市の豊川稲荷本山や東京都港区の豊川稲荷東京別院など全国約80カ所で利用でき、今後も順次拡大を検討しているという。【藤渕志保】

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