日本原子力研究開発機構(JAEA)は、福島第一原子力発電所2号機で2024年11月に採取された燃料デブリを分析した結果、核燃料の主成分であるウランを検出したと公表した。「表面に広くウランを含む箇所があることを確認」とし、これにより「採取されたデブリに燃料成分が含まれることがわかった」としている。

福島第一原発では2011年の事故から約13年8ヵ月が経過した2024年11月7日に、溶け落ちた核燃料が原子炉内の金属やコンクリートと混ざり合って冷え固まった「燃料デブリ」の試験的取り出しに成功した。現在、茨城県にあるJAEAの研究施設でデブリに含まれる成分やデブリの構造を分析する研究が行われていて、この分析から事故時の状況を把握し、今後のより詳細なデブリ採取計画へとつなげたい考え。
JAEAは12月26日に、報道機関向けにこれまでの分析結果を公表し、「採取されたデブリにウランが含まれていたこと」を明らかにした。ウランは核燃料を構成する主な物質で「表面に広くウランを含む箇所があることを確認した」とした。これにより、採取された0.7グラムのデブリについて、コンクリートなどだけを掴んだだけでなく「溶け落ちた核燃料の成分」が含まれていることになるという。
これまでにもウランが核分裂してできる「ユウロピウム」が検出されていたが、ウランの存在が判明するのは初。他にも「アメリシウム」などが検出されているという。

JAEAは他にも「全体的に赤褐色」「表面の一部に黒色の部分や光沢をもつ部分が認められた」とし、デブリから1~2cmの距離の放射線量は1時間あたり約8ミリシーベルトだったと公表したうえで「典型的なデブリの一部が取得できた」と評価した。

今後、採取された燃料デブリは、既に研究が行われている日本原子力研究開発機構(JAEA)の大洗原子力工学研究所のほか、同じくJAEAの原子力科学研究所、また、日本核燃料開発株式会社(NFD)、MHI原子力研究開発株式会社(NDC)の4つの施設で分析が行われることとなっているが、これに加えて、兵庫県にある大型放射光施設SPring-8での研究も計画されている。SPring-8は細く強力な電磁波である「放射光」を用い、物質の種類や構造、性質を詳しく知ることが期待できる施設で、いわば強力なレントゲンで物質の内部を明らかにするようなもの。創薬や産業製品の評価といった研究にも用いられたことがある。

【燃料デブリ試験的取り出し・これまでの経緯】
■2021年:当初の試験的取り出し着手予定
⇒ロボットの開発遅れ、経路への堆積物の詰まり発覚などで延期
■2024年8月22日:試験的取り出し着手を計画するも「現場での棒の順番ミス」が発覚し取りやめ
⇒東京電力が現場に立ち会っていなかったことなどが問題に。
管理体制の見直しを行う。
■2024年9月10日:試験的取り出し作業に着手
■2024年9月14日:ロボットが一度デブリをつかむ
■2024年9月17日:カメラ4台のうち2台の映像が見られなくなるトラブルで中断
⇒高い放射線が影響でカメラ内部に電気がたまり不具合を起こしたと推定。
カメラ交換を決断。
■2024年10月24日:カメラの交換作業を完了
■2024年10月28日:試験的取り出し再開
■2024年10月30日:デブリの把持・吊り上げに成功
■2024年11月2日:デブリを事故後初めて格納容器外へ取り出し成功
■2024年11月5日:放射線量が「取り出し」基準クリアを確認
■2024年11月7日:試験的取り出し作業完了
■2024年11月8日:デブリの水素濃度などが輸送の基準を満たすこと確認
■2024年11月12日:事故後初めてデブリを第一原発構外へ 研究施設へ輸送

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