2025年の年金制度改正に向け、厚生労働省の審議会は、「106万円の壁」撤廃の方針や会社員などに扶養される配偶者が加入する「第3号被保険者制度」の今後の方向性について盛り込んだ報告書案を公表しました。
現在、パートなど短時間で働く人は従業員51人以上の企業で、週20時間以上働き、年収約106万円以上を受け取ると、厚生年金に加入し保険料を払う必要があり「106万円の壁」と言われています。
厚労省の審議会が示した報告書案では、賃上げにともない、週20時間以上働けば、「106万円の壁」を上回る地域が多いとして、年収106万円以上とする賃金要件を撤廃する方針が盛り込まれました。
撤廃の時期は「配慮すべき」としています。
また、従業員51人以上とする企業規模要件も撤廃する方針で労働時間要件のみ残ることになります。
一方、厚生年金の加入により手取りが減ることに対する特例措置で、本人と企業が折半する保険料の負担割合を年収約156万円未満の人に限定して企業の負担を増やす案は、賛成や反対、慎重な意見もあり、具体的な制度の検討を深める必要があるとしています。
「第3号」の見直し 今後の方向性は
また、会社員などに扶養される配偶者が加入する「第3号被保険者制度」の廃止については今回、盛り込まれませんでした。
報告書案では、今後も厚生年金の加入者を増やしていくことから、「(第3号の)縮小を進めることが基本的な方向性」としています。
現在約670万人いる第三号被保険者の多くが専業主婦や出産・育児、介護などで働けない女性で、男女の賃金格差を生む原因となっているほか、保険料を払わなくても国民年金を受け取れることから不公平だとの指摘があります。
こうしたことを受け、政府に対し、実態を分析しながら引き続き廃止にするか検討していくことを求めるとともに、一定の理由で働けない人などへの配慮が必要だとしています。
国民年金底上げ案は
このほか、厚生年金の積立金を使って、国民年金を底上げする案については、「経済が好転しない場合」に「条件付き」で行うべきとしています。
年金制度では、少子高齢化が進み現役世代が減っても制度が保てるよう、支給額の伸びを物価や賃金の上昇率より低く抑える「マクロ経済スライド」という仕組みで年金の給付水準を抑えています。
この案では、財政が堅調な厚生年金の積立金の一部を国民年金の財源に充て、国民年金の給付減額期間を縮めるとしています。
厚労省は、経済成長が現状のままだと国民年金の給付水準が長期間低下するとしてマクロ経済スライド発動の意義を強調してきましたが、報告書案では「経済が好調に推移しない場合に発動されうる備え」としてさらに検討を深めるべきとしました。
18日には、自民党の年金委員会が提言をまとめていて、マクロ経済スライドについて「今後の経済が好調に推移しないリスクシナリオが実現する場合に発動されうる」としていました。
厚労省は、与党などとの協議を経て、来年の通常国会に必要な法案を提出したいとしています。
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