財政検証の議論に臨む社会保障審議会年金部会の委員や厚生労働省幹部ら=東京都千代田区で2024年7月3日、宇多川はるか撮影

 厚生労働省は24日の社会保障審議会年金部会で、次期年金制度改革に向けた報告書案を示した。厚生年金の積立金を活用して基礎年金の給付水準を3割底上げする改革案を盛り込んだが、発動は経済が好転しない場合との条件を付けた。年収の壁による働き控えをなくそうと賃金要件(年収換算106万円以上)を撤廃し、厚生年金保険料の労使折半ルールを見直す特例措置なども盛り込んだ。ただ、連合などが将来的な廃止を求める「第3号被保険者制度」の見直しは見送った。

 報告書では、次期年金制度改革について「平均寿命の延伸や家族構成やライフスタイルの多様化、女性・高齢者の就業拡大、賃上げなどの変化へ対応する」と明記した。

 具体的な対応案として、基礎年金の給付水準を底上げするため、厚生年金の積立金を活用し、物価や賃金に応じて年金額を減額する期間の終了時期を2036年度に前倒しする。経済状況が良ければ減額期間が短縮されるため条件を付けた。

 年収の壁対策として、厚生年金の加入要件を大幅に緩和。最低賃金の上昇を受け、週20時間の就労時間要件を満たせば年収106万円を超える地域が増えていることから、26年10月めどで月額賃金8万8000円以上の賃金要件を撤廃。従業員51人以上の企業規模要件も27年10月の廃止を想定する。

 厚生年金保険料の労使折半ルールを見直し、企業が多く負担できる時限的な特例措置を26年4月めどで導入する。標準報酬月額12・6万円(年収151万円)未満を対象とする。

 一定の給与がある高齢者の厚生年金を減額する「在職老齢年金」も見直す。年金の減額が始まる基準額を現行の50万円から62万円か71万円に引き上げるか検討中だ。遺族厚生年金で支給に男女差が残る場合の是正措置なども盛り込んだ。【宇多川はるか】

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