ふるさとを離れた別々の地でヒロシマを伝えてきた同級生の2人が、出身地の広島県府中市上下町で2025年1月5日にある平和イベントで初めて共演する。戦後80年の年明け、2人は「故郷への感謝の思いを込めて臨みたい」を語る。
兵庫県西宮市でバレエ教室を主宰する小谷ちず子さんと、相模原市在住で被爆体験伝承者を務める歌玲子さん。2人は同じ1953年生まれ。上下町の小学校からの同級生で、72年春に県立上下高校を卒業した。
小谷さんはクラシックバレエやコンテンポラリーダンスを手がける一方、「Pカンパニー」と呼ぶチームで平和や反核をテーマにした作品も多く演じ、市民団体「チェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西」の活動などにも参加。両親は広島の被爆者だった。舞台芸術を通じて平和を訴えようと、ダンサーや演出家らによるプロジェクト「A WiSP」を22年夏に始めた。名称は「共に平和の種となろう」の思いを込めた「Along With Seeds for Peace」の頭文字だ。
歌さんは地元で小学校教員を長く勤め、19年に相模原市へ。親戚には被爆者も多く、8月6日は「特別な日」だった。しかし県外での関心の低さに驚き、「自分にできることは」と思い立って被爆証言の伝承者を養成する広島市の事業に応募した。21年から2年間の研修を経て、昨年秋から関東などで活動する。
小谷さんと歌さんは昨年10月に小学校の同窓会で会った際、手法は異なっても共通する思いを知り「一緒に平和や命を伝える場をつくりたい」と意気投合した。実現に向けて動きが加速したのは今春からだ。
5月に広島市内で「A WiSP」の公演があり、やはり同級生で整形外科クリニックを営む黒木秀尚さんが観劇していた。「ぜひ地元で上演を」。小谷さんに打診した黒木さんは、人口減少が続く上下町の魅力向上などに取り組む有志約10人でつくる「Uターンを促進する会」の会長。小谷さん演出の創作ダンスと、歌さんによる講話や被爆樹木をテーマにした絵本の朗読などを組み合わせたイベントを同会主催で開くことになった。
黒木さんは「世界的に平和が危ない折、上下高の卒業生に平和のために素晴らしい活動をしている人がいると若い人たちに知ってもらい、故郷に誇りを持ってほしい」と語る。
小谷さんは「念願かなったジョイントの最初が故郷なのは緊張しますが、平和への思いを精いっぱい伝えたい」と語り、歌さんは「被爆体験の風化に危機感がある中、こんなに早く一緒の活動が実現できて感謝しています」と話している。
イベントは1月5日午後1時半から、府中市上下町民会館で。1000円(高校生以下は招待)。問い合わせはPカンパニー(090・5647・0751)。【宇城昇】
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