孤独・孤立対策の活用を呼びかける内閣官房のポスター

 孤独や孤立を社会全体の課題と捉え、予防、脱却を進めることを目指す「孤独・孤立対策推進法」が今年4月に施行された。世界に先駆けた法整備と期待される一方、8割の人がこの法律を認知していないことが、民間シンクタンクの調査で判明した。

 NTTデータ経営研究所が7月、インターネット上でアンケートを実施し、20代~60代の男女1054人が回答した。調査では、「孤独・孤立対策推進法」「つながりサポーター」「ゲートキーパー」「子ども食堂」など、法律や対策、キーワードを10項目列挙。「知っており、概要を説明できる」「知っているが、概要は説明できない」「聞いたことがある」人の割合(認知度)を調べた。

8割が法律知らず

 同法については79・4%が「知らない」と回答。年代別に見ると、高年齢層ほど認知度が低く、「知っている」「聞いたことがある」との回答は、20代、30代の2割強に対し、60代は16・8%だった。

 孤独・孤立問題で困っている身近な人を支えるため、国が2024年度から育成を始めたボランティア「つながりサポーター」については、「知っている」「聞いたことがある」との回答は17・8%。30代の22・9%が最も高く、60代は14・2%にとどまった。

 自殺につながるサインに気づき、適切な対応を図ることができる「ゲートキーパー(命の番人)」については、「知っている」「聞いたことがある」は20・6%。こちらも30代が最も高く、60代が最も低かった。

 最も認知度が高かったのは子ども食堂で、76・3%が「知っている」「聞いたことがある」と回答。年代別では20代の44・5%に対し、60代は91・2%に達し、年齢層が上がるほど浸透していた。「子ども食堂」と、次に高かった「民生委員」(65・4%)以外の8項目は、いずれも2~3割程度の認知度だった。

 一方、調査日前の1カ月間で「見知らぬ人を助けたことがある人」の半数、「寄付したことがある人」の6割が法律名を「知っている」と回答。「助けたことがない人」の16・7%、「寄付したことがない人」の17・4%を大きく上回った。

関心高め、支援者発掘を

  NTTデータ経営研究所は「孤独・孤立は誰もが当事者になりうる可能性があるが、法律や対策は十分に認知されず、普及していない。日常生活での人助けなどの行動と、対策の認知度との相関が示されたことから、援助意識を社会全体で高めていくことが認知度向上に有効ではないか。専門職でなくても、問題を認知し関心を持っている人を発掘し、ネットワークを構築していくことも重要だ」としている。【太田敦子】

孤独・孤立対策推進法

 個人の内面の問題と捉えられがちな孤独・孤立を社会全体の課題と位置付ける。首相をトップとする推進本部の設置などを定め、2024年4月、世界に先駆けて施行された。6月には、「声を上げやすい社会の実現」や「居場所の確保」などの基本方針を盛り込んだ「重点計画」を策定した。内閣官房が23年に全国の16歳以上を対象に行った調査では、孤独感があると答えた人が約4割に上った。

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