確定した刑事裁判をやり直す再審制度の見直しについて、法務省が早ければ来春にも法制審議会(法相の諮問機関)への諮問を検討していることが関係者への取材で判明した。現行の再審制度には請求後の具体的なルールが整備されておらず、「証拠隠し」や審理の長期化を招く要因となっているとの批判があった。法務省に設置された有識者協議会の議論を踏まえ、具体的な諮問内容を判断するとみられる。
刑事手続きを定めた刑事訴訟法には500を超える条文があるが、再審に関する規定はわずか19条にとどまる。刑訴法が1948年に制定されてから、再審制度に関する規定は変わっていない。
刑訴法には、再審を請求した後の証拠の開示方法や審理の進め方といったルールが定められておらず、裁判所によって運用が異なる「再審格差」が生じているとの指摘があった。
2024年10月に、戦後5事件目となる死刑囚の再審無罪が確定した袴田巌さん(88)のケースでも、再審制度の不備が浮き彫りになった。
袴田さんは1966年に静岡県で一家4人を殺害したとする罪に問われ、死刑が確定。袴田さん側は81年と2008年の2度、再審を請求した。ただ、再審無罪につながった証拠が検察側から弁護側に開示されたのは第2次再審請求審の最中だった10年になってから。結局、逮捕から再審無罪が確定するまで、58年の月日を要した。
日本弁護士連合会は23年、証拠開示のルール整備や再審開始決定に対する検察側の不服申し立ての禁止を盛り込んだ刑訴法改正案を公表し、見直しを求めてきた。法務省はこれまで法改正に慎重な姿勢を示してきたが、近年、再審開始決定が相次いでいることを踏まえ、見直しに向けた議論は避けられないとみている模様だ。
法務省には現在、刑事手続きのあり方を検討する有識者協議会が設置されていて、11月に再審制度の議論に向けた論点を整理した。年明けにも次回会合を予定している。【三上健太郎】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。