引き取り手のない遺体を自治体が火葬する際、読経や拝礼など何らかの儀礼を行うのは約4割で、儀礼を行わない自治体が約6割に上ることが、国立歴史民俗博物館(千葉県佐倉市)や東北大などの研究チームによる全市区町村へのアンケート調査で分かった。
地域差も大きく、調査に携わった専門家は、引き取り手のない遺体を自治体が取り扱う際の指針を地域の実情を踏まえて検討する必要があると指摘する。【岡田英】
「儀礼なし」多い関東、中国
親族などの引き取り手がいない遺体は、墓地埋葬法などに基づき、死亡地の市区町村が火葬し、埋葬する。しかし、その対応を定めた統一ルールはなく、自治体によって対応がまちまちになっている。
研究チームは文部科学省から助成金を受け、葬送儀礼の観点から実態を明らかにするために今年1~2月、全1741市区町村にアンケート調査を実施。52・7%に当たる918の自治体から回答を得た。
厚生労働省も今夏、引き取り手のない遺体の火葬手続きなどについて、全国の自治体を対象に実態調査を実施したが、儀礼の有無に着目した全国調査は今回が初めてという。結果は博物館が21日に東京都内で開くシンポジウムで報告される。
市区町村が遺体を引き取って火葬するまでの間に、供養や追悼の儀式を行うか聞いたところ、「儀礼なし」は62・5%を占めた。地域別にみると、関東地方が74・6%、中国地方が74・5%と特に高かった。
一方、僧侶による読経や、市区町村職員や葬祭業者による拝礼など何らかの儀礼があったのは37・5%。儀礼の内訳は、「職員・業者による拝礼のみ」が約6割で最も多かった。地域別では東北、北陸、甲信、近畿で儀礼ありの割合が高かった。
遺骨の保管期間「決めず」7割超
火葬後の遺骨の保管期間については、76%が「決まっていない」と回答。「決まっている」は21%にとどまった。
決まっている自治体のうち、最も多かった保管期間は「1~5年以内」で約4割の88自治体。次いで「1年以内」が56自治体、「5~10年以内」が32自治体だった。10年超も18自治体あり、ばらつきが大きかった。
引き取り手がない遺体を火葬後、遺骨を骨つぼに収める拾骨量を、一般的な火葬と比べて「少なくしている」と回答した市区町村は23・3%あった。中国地方では50・9%となるなど、西日本で少なくする自治体が多い傾向が見られた。
遺骨の最終的な安置場所については、不特定多数の人を一緒に供養する「合葬」が47%で最も多かった。一方、「すべて個別に安置する」と答えた自治体も36%あり、対応は分かれた。
合葬は東日本で多い傾向が見られた。遺骨をすべて骨つぼに収める傾向が強いため、骨つぼが大きく、個別安置すると保管場所が不足するためと考えられるという。
身寄りがない人を対象とする終活支援事業が「ある」と回答した市区町村は8・1%にとどまった。
研究チームの山田慎也・国立歴史民俗博物館副館長は「一般的にも葬儀が簡素化されていく中、ともすれば儀礼はやらない方向になりがちだ。今回の結果では地域差も大きく、宗教感情など地域の実情を踏まえ、引き取り手のない死者を取り扱う指針を国を含め社会全体で考える必要がある」と指摘している。
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