2024年3月に閉業した秋田県男鹿市の温泉施設「夕陽(ゆうひ)温泉WAO」の跡地で魚の陸上養殖を行おうと、NTT東日本秋田支店と地元の水産会社など8社がタッグを組み、新会社「男鹿なまはげ魚工房」を設立した。高級魚・クエの仲間で国内ではほとんど流通していないハタ科の大型魚「タマカイ」を26年夏から飼育し、27年夏に初出荷する計画だ。秋田名物「ハタハタ」に続くブランド魚として成長させようともくろんでいる。
養殖方式には「閉鎖循環式陸上養殖」を採用。飼育水を循環させ、排水が出ないことから、環境にやさしい養殖が可能で、従来の漁業に比べ、安定した生産や事故リスクの軽減、気象に影響を受けないといった利点があるという。
また、NTT東日本のICT(情報通信技術)を生かし、水温や塩分、残存酸素濃度などを常時計測して適切な値を維持する水質センサーや、ネットワークカメラやセンサーによって集めた情報を基にした専門家によるリアルタイム遠隔指導も導入する。陸上養殖で飼育された魚は、寄生虫の発生リスクが最小化されるなど消費者にとっての安全面の利点もあるという。
ハタ科の魚は骨からもうまみたっぷりのだしが取れることから、飼育予定のタマカイも鍋料理との相性が良さそうだという。生息適温は26~29度とされ、40度超の温泉と熱交換することで温度調節を図り、当面は年間2~3トンの生産を想定。将来的には養殖施設の拡充による生産量アップや他魚種の飼育なども検討していくという。
新会社に参画する男鹿市の水産会社「武田水産」の武田勝社長は「魚の水揚げは全国で年々減少している。秋田も例外ではない」と指摘。「水産業は天候まかせ、海まかせ、魚まかせで非常に不安定。だからこそ陸上養殖に魅力を感じる。我々だけでなく、地域にとっても大きな魅力になる」と期待を込めた。
新会社の社長に就任した澤村誉・NTT東日本秋田支店長は「地域の水産会社とともに成長していくモデルとして、街づくりに貢献するきっかけとしたい」と抱負を述べた。【高橋宗男】
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