高知県東部の香美市と大豊町の尾根筋に、県内有数の大規模風力発電所の建設が計画されている。事業者の企業「GF」(徳島県阿南市)によると、高さ180メートルの風車を36基建設し、1基当たり4300キロワット、合計出力15万4800キロワット(いずれも最大)を発電する。同社は「地域社会への貢献とともに、(2050年までに温室効果ガスの排出実質ゼロを目指す)ゼロカーボンシティの実現と、エネルギーの安定供給に向けた一助になりたい」としている。
計画は「嶺北香美ウィンドファーム事業(仮称)」。今後、環境影響評価(アセスメント)の手続きを進め、早ければ2032年にも着工する計画だ。輸送などに使う道路も含め、事業面積は2662ヘクタール。既に10月から地元8カ所で住民説明会を開いた。同社はアセスメントの最初の手続きに当たる「計画段階環境配慮書」を経済産業省や高知県などに提出。県庁など4カ所で20日まで縦覧可能で、意見書を提出できる。
同社の担当者は「安定して発電できる風量が期待できることや送電が可能なこと、人家から1・6キロメートルは離れていることなどから計画地を選定した。調査やアセスメントの結果によって計画は変更する可能性もある」などと説明。「地域の方からの意見や疑問に対しては、丁寧に説明していきたい」と話している。
一方、計画の公表を受けて10日、香美市で市民有志が「香美・大豊風力発電計画を考える会」を開き、約100人が参加した。講師を務めた市民団体「四国風車ネットワーク」の黒田太士代表によると、今回の計画は、計画段階の事業も含めて四国では有数の発電規模。現在、大豊町で稼働中の「ユーラス大豊ウインドファーム」(1基当たり出力2300キロワット)は風車の高さが99メートルだが、今回の計画では180メートルで、その1・8倍に当たるという。
黒田氏は会合で、風車の建設で土砂災害や水源変質などのリスクが生じると指摘。自然豊かな環境を求めて住む人々が風車周辺の地域を去り、過疎化が一層進む可能性もあるとし、「住んでいる人々にとって本当に風力発電が必要なのか考えてほしい」と呼びかけた。参加者からは「2日前に計画を知った。山が好きで、この環境やきれいな水を子どもたちに残したい」など、計画に反対する声も出ていた。【小林理】
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