訪米を前に取材に応じる家族会の横田拓也代表(左から5人目)ら=29日午前、羽田空港(松井英幸撮影)

北朝鮮による拉致被害者、横田めぐみさん(59)=拉致当時(13)=の弟で、家族会代表の拓也さん(55)ら被害者家族や、超党派の拉致議連メンバーが29日、被害者の早期帰国に向けた協力を求めるため米国へ出発した。首都ワシントンで米政府関係者らと面会する。帰国は5月4日の予定。

出発を前に、羽田空港で取材に応じた拓也さんは、「新たな運動方針とその背景にある苦しい思いを伝えていきたい」と意気込みを語った。

家族会と支援組織「救う会」は2月、「親世代が存命中に全拉致被害者の即時一括帰国が実現すれば、日本政府が北朝鮮に人道支援を実施することと、日本がかけている独自制裁を解除することに、反対しない」という新方針を公表。昨年、新たに盛り込んでいた「人道支援の容認」部分は、前回の訪米ですでに米側に伝達しており、異論も出なかった。

今年はさらに「制裁解除」を追加した一方、親世代が存命中の一括帰国が実現しなかった場合は、「強い怒りを持って制裁の強化を求める」とも併記。関係者は「譲歩姿勢を強めたなどと誤解されることのないよう、今回もきっちりと本意を説明してくる」と話す。

最愛の家族を奪った当事者である北朝鮮に対し、強い怒りや憎しみはあるものの、親世代の健康に懸念があり、「残り時間」を強く意識する中で導き出された「苦渋の判断」であることを、強調する構えだ。

他に訪米する家族は、田口八重子さん(68)=同(22)=の長男、飯塚耕一郎さん(47)。拉致議連会長の古屋圭司元拉致問題担当相(自民党)ら国会議員も同行する。前日の28日に出発した救う会の西岡力会長らも、現地で合流する。

関係者によると、ワシントンでは、令和元年7月まで約2年間、駐日大使を務めたハガティ上院議員や、知日派のアーミテージ元米国務副長官、米国家安全保障会議(NSC)関係者らとの面会が予定されている。

拓也さんによると、今回の訪米にあわせ、母親の早紀江さん(88)の近影に「娘が13歳のときから、半世紀近く会えていない母親」などとする英語のメッセージを添えたチラシを作成。米側関係者に配る予定で、早急な事態進展の必要性を視覚的にも訴える。

耕一郎さんはこの日の取材に、「時間の経過とともに、状況は悪くなっている。いち早く家族を救うためにも、米国のサポートや協力、理解は重要だ」と訪米の意義を語った。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。