戦前に首相を3度務めた近衛(このえ)文麿(ふみまろ)(1891~1945年)の邸宅「荻外荘(てきがいそう)」(東京都杉並区荻窪2)の復元作業が完了し、9日から一般公開される。昭和前期の政治の舞台となった客間などを見学できる。3日には報道機関向けの内覧会があった。【白川徹】
荻外荘はもともと、大正天皇の侍医頭だった入澤達吉が1927年に建てた別邸だった。のちに築地本願寺を設計した建築家の伊東忠太が設計。37年に近衛が購入し、45年12月に書斎で自決するまでの期間を過ごした。
2度目の組閣直前の40年7月には、外相と陸相にそれぞれ就任予定だった松岡洋右と東條英機らを呼んで、日独伊の連携強化を話し合った「荻窪会談」を開催した。
真珠湾攻撃の2カ月前にあたる41年10月には、対米開戦の回避を試みた「荻外荘会談」が開かれた。こうした昭和前期の国を左右する重要な会合が度々開かれたことから、2016年には国の史跡に指定された。
荻外荘では近衛の次男が暮らしていたが12年に亡くなり、地元町会を中心に保存の機運が高まった。区は14年に土地と建物を購入。区外に移築されていた建物の一部も買い戻し、政治の舞台として最も注目された1940~41年ごろの姿への復元を目指した。
客間は、荻窪会談の様子を捉えた写真を参考に調度品を再現した。備え付けのタブレットを使えば、会談を再現した映像を見ることができる。食堂では当時のニュース映像や、荻外荘復元の過程を追った記録映像を流している。
区みどり公園課の大場将国課長は「日本が戦争に向かう転換点となった場所が身近にあることを実感し、戦争を『自分ごと』として考えるきっかけにしてほしい」と話した。
15日までは午後4~8時にライトアップされる。開園時間は午前9時~午後5時。大人300円、小・中学生150円。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。