伐採期を迎えた香川ヒノキの林=香川県まんのう町で(旺建提供)

 全国的に知名度の低い香川県産ヒノキを売り出そうと、行政や民間企業が連携して動き出した。厳しい生育環境だからこそ生み出される特性に着目してブランド化を目指す。

 県森林組合連合会によると、香川はかつて松の植林が盛んだった。しかし、1970年代に松食い虫被害を受けてヒノキに転換し、今では民有人工林のうち6割をヒノキが占める。全国的には第二次世界大戦後にヒノキの植林が進められた。後発組みの香川県産は今、伐採期を迎えている。

「かがわヒノキ」のブランドロゴマーク(香川県提供)

 香川は年平均降水量が全国46番目(都道府県庁所在地の1981~2010年の平均値)で、渇水に何度も悩まされてきた。また、県産ヒノキの大半は、徳島県境に連なる讃岐山脈の北側に植林されているため日照条件が悪く、成長に長い時間がかかる。

 一方、樹木の成長にとってはマイナスでも、良質な建材を生み出す環境としては好条件だとされる。ゆっくり成長していくため、結果的に年輪が均等に密になり、ゆがみが少なくなるからだ。

 ブランド化に向けて「香川ヒノキを応援する会」の設立イベントが8月に開催され、大学や農協、企業、福祉や教育などの関係者約30人が出席した。連合会の五所野尾(ごしょのお)恭一会長が「厳しい環境の中で育っているので、木目が非常に詰んでいて美しい。木肌も香りも非常にいい。この特性を発信していきたい」とあいさつした。

自然乾燥させた香川ヒノキの板に囲まれた部屋=高松市で(旺建提供)

 イベントでは九州大大学院農学研究院の清水邦義准教授が、香川ヒノキの芳香成分が心身に及ぼす効果を調べた実験結果を報告した。実験では、ヒノキ板を壁材とした防音室と、ヒノキに似せた木目調ビニールクロスを張った防音室を準備。学生計8人を被験者として各室内で計算問題を解かせ、脳波や心電図を測定した。その結果、ヒノキ板の部屋の方が作業効率を高め、休憩時にリラックス効果をもたらす可能性が示された。清水准教授は「芳香成分の効果にエビデンス(科学的根拠)がつくと、市場価値は高まる」と指摘した。

 イベントの会場を提供した住宅メーカー「旺建」(高松市)の安守直敏社長は、清水准教授の共同研究者でもある。芳香成分に注目し、抽出したエッセンシャルオイル(精油)を国内外で販売する計画を持っている。安守社長は「香りの効果を前面に出せば、木材の用途は学校や医療施設などに広げていけるはずだ。今は無名の香川ヒノキでも勝負できる」と期待する。

伐採期を迎えた香川ヒノキの山=香川県まんのう町で(旺建提供)

 応援する会は今後年2、3回のペースで会合を開き、活用方法や販路を探っていく。

 香川県もPRに力を入れる。ブランド名「かがわヒノキ」のロゴマークとキャッチフレーズ「きめこまかな 香川の木 かがわヒノキ」をつくり、11月18日に発表した。県や業界団体がPRに使うほか、事業者にも建材や木製品への刻印、建築物での表示などに活用してもらいたい考えだ。【佐々木雅彦】

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