町内に書店がない山口県田布施町は、子供たちがより多くの本に触れられる環境を整えようと、出版取次大手トーハン(東京都)と「あの本が手に届くまちづくり連携協定」を結んだ。本を手に取って選び、注文して購入できる図書館の開設などを検討する。【峰下喜之】
町によると、人口減を背景に「最後の書店」が撤退した2005年以降、コンビニが扱う雑誌などを除く書籍を手に取って購入するには、隣接する光市か柳井市に行かなければならなくなった。協定締結は現状を知ったトーハンからの提案が契機となったという。
連携・協議する事項は、図書館を拠点に住民が豊かな文化に触れられる環境の構築▽読書活動の推進▽本を通じた地域発展と住民サービスの向上――など。町役場で11月に締結式があり、東浩二町長は「あの本」に込めた思いを「図書館の貸本ではなく、自分で選んで、手元に置いて何度も読み返す人生の宝物を見つけられるようにしたい」と説明。具体的には「本がほしかったら『どうぞ』と買える図書館づくり」を目指す考えを示した。
東町長と協定書を交わしたトーハンの金子俊之・上席執行役員によると、本を通じたまちづくりに向けた協定を自治体と結ぶのは全国で初めて。「全国津々浦々に本を運ぶ社是を果たす」としたうえで、青森県八戸市営「八戸ブックセンター」や、注文を受けた本を指定した書店に届ける自社のオンライン書店の取り組みを紹介。田布施町外の書店に委託して出張販売所を設けるアイデアを披露し、図書館での書籍販売は可能で具体化に努めるとした。
町では連携の第1弾として、25年2月予定の図書館まつりで、町外の書店による児童書の出張販売を検討している。
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