パラグアイで開かれている国連教育科学文化機関(ユネスコ)政府間委員会は4日(日本時間5日)、「伝統的酒造り 日本の伝統的なこうじ菌を使った酒造り技術」を無形文化遺産に登録することを決めた。国内の無形文化遺産は23件になる。
ユネスコの評価機関が11月、登録するよう勧告していた。日本の無形文化遺産登録は、2022年の「風流踊(ふりゅうおどり)」以来2年ぶり。日本の食文化関係では13年の「和食」以来の登録となる。
伝統的酒造りは、カビの一種である「こうじ菌」の力を借り、コメなどの原料を発酵させる技術。その技術で造られた酒は、祭事や婚礼など日本の文化上、不可欠な役割を果たしており、杜氏(とうじ)や蔵人らが、知識や技術を継承してきた点が評価された。
ワインや缶チューハイなど酒類の多様化や若者のアルコール離れで、日本酒や焼酎などは国内消費が減少し続けている。特に日本酒は23年の国内出荷量が約39万キロリットルで、ピーク(1973年)の4分の1以下になった。
技術を受け継いできた関係者らは、登録をきっかけにした業界活発化に向けて意気込み、今後の継承を見据えた課題を指摘する。
国内の消費は減っているが、和食への関心の高まりなどから日本酒の海外輸出量は10年前の約4倍の400億円台に拡大している。
海外のソムリエを日本に招き、酒造りの現場を見てもらうなどしてきた日本酒造組合中央会の宇都宮仁理事は「日本酒でも世界での知名度はまだ高いとは言えず、焼酎や泡盛はほぼ知られていない。今後日本独特のこうじを使う酒としておいしさや文化をPRしていきたい」と話す。
日本酒造杜氏組合連合会の石川達也会長は「中小零細企業が多い個々の酒造会社の中だけで各世代の人材をまんべんなくそろえ、次の世代が安定的に入るサイクルを作ることは難しい。酒造会社間で人材を融通し合うシステムも考えていかないといけない」と訴えた。【植田憲尚】
無形文化遺産
ユネスコ無形文化遺産保護条約の締約国から選ばれた24カ国の政府間委員会が、評価機関の勧告を踏まえ登録の可否を決める。日本では2008年に「能楽」などが初登録された。遺産数が多い日本の候補審査は2年に1回となることが多い。日本は次の候補として「書道」を提案している。
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