DV対策事業の一環で、沖縄県とおきなわ女性財団が主催する日本公認心理師協会の信田さよ子会長の講演会が11月20日、那覇市の県男女共同参画センターてぃるるで開かれた。女性相談員ら145人が参加し、DVなど暴力被害を受けた被害者への支援について学んだ。(社会部・大庭紗英)
信田さんは「家族という私的領域の中で起こる暴力は、長い間容認されてきた」と話す。外からは見えにくい家庭内の暴力は、支援に入ると「一つ見つかれば次々出てくる。暴力でつながれた家族の歴史が見えてくる」と説明。加害者となる夫や妻もまた虐待された経験があり、そのトラウマ(心的外傷)症状がDVとして現れるなど、連鎖性があることを説いた。
暴力が繰り返されてきた背景から「被害者支援と加害者更正はセットで考える必要がある」と指摘。信田さんが1995年に立ち上げ、現在顧問を務める原宿カウンセリングセンターは、被害者へのカウンセリングの他に加害者更正プログラムも行っていると紹介した。
DVでは被害者側が「殴られた原因は自分にある」と自責し、逆に加害者が「自分を怒らせて殴らされた」という被害者意識を持っているケースも多い。被害者支援では「あなたは被害を受けている」と責任がないことを伝え、加害者アプローチでは更正プログラムの中で殴った責任をしっかりと突きつけていくことが求められるという。
支援対象者は感情のコントロールや対人関係に困難さを抱え、突然怒ったり、心を開いてきた人とのつながりを自ら切ったりと不可解に思える行動を取ることも多い。信田さんは援助者の心がけとして、そのような行動は「トラウマ(心的外傷)に起因しているかもしれない」との視点を常に持って接した方がいいと助言した。
トラウマ症状の一つに「フラッシュバック」がある。加害者と似た格好の人を怖がったり、地名を聞くだけでも嫌な思いをしたりと「生活が限られ、どんどん被害者は追い詰められてしまう」。そのケアはフラッシュバックの衝撃を緩和させ、日常を過ごしやすくすることが求められる。援助者が知識や対応を身につける支援の仕組み、「トラウマインフォームドケア」が重要と語った。
さらに「加害と被害の問題において中立はない。援助者は積極的に被害者の立場に立つという覚悟を持って」と断言。中立は被害者を傷つけ、2次被害につながりかねない。「常に被害者や相対的弱者側に立ち、目の前の人が語る言葉を信じることが支援の始まり」と背中を押した。
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