水原一平容疑者(左)と大谷翔平選手

米大リーグ・ドジャースの大谷翔平選手(29)の元通訳、水原一平容疑者(39)が違法賭博をしていた問題。借金返済のため、水原容疑者が不正送金していた先は捜査対象となっている違法ブックメーカー(賭け屋)だったとされ、専門家は、大谷選手の「情報目当て」に胴元側が水原容疑者に近づいた可能性を指摘する。

「コロンボ一家」配下に多数の胴元

「You Bet You Lose(賭けをしたら全てを失う)」

米スポーツ界にはこんな戒めの言葉がある。大リーグ機構(MLB)は、選手らが野球賭博に関与した場合は1年間の資格停止処分、それが自分に関わる場合は永久追放になると規約に明記している。

違法なスポーツ賭博の胴元は、賭け金の回収や資金の提供などでマフィアと密接な関係にある。例えば、ニューヨークを拠点とするマフィア「コロンボ一家」の場合、30~40の胴元が配下にあるとされる。

プロスポーツ選手は高額の年俸を稼ぐだけでなく、賭博の結果を左右する「情報源」としてもターゲットになりがちだ。過去には選手の信頼を得た車のディーラーの手引きで、MLBチームのロッカールームにマフィア関係者が出入りしたケースもあったという。

より額の大きな賭けに次々誘い込み

たとえ合法な州であっても、スポーツ賭博に手を染めた選手や球団関係者らは、マフィアの情報網で地下社会に瞬く間に共有されてしまう。

米司法省の発表によると、水原容疑者が送金した総額は1600万ドル(約24億5千万円)以上とされ、より額の大きな賭けに次々と誘い込まれた可能性がある。

米国のスポーツ賭博に詳しい追手門学院大の吉田良治客員教授(スポーツマネジメント)は、胴元が水原容疑者に近づいた理由を大谷選手とみる。

体調やチームの雰囲気などは、賭けの判断材料になるため、「年俸数千万円の水原氏が巨額の借金をできた。胴元はこれを上回るメリットを見いだしており、大谷選手の情報以外に考えられない」と指摘。今回のケースでは大谷選手名義の口座から胴元に送金があったことに触れ「プロ選手は資産管理だけでは不十分で、資産防衛の意識も必要だ」と話している。

プロ野球や大相撲でも…氷山の一角

スポーツ賭博は日本でもたびたび問題になってきた。過去に摘発されたケースでは、胴元などとして暴力団関係者が密接に関係するなど、反社会的勢力の資金源になっていた構図が浮かぶ。

平成27~28年、プロ野球巨人の選手4人が高校野球や、巨人の試合を含むプロ野球を対象に賭博をしていたことが発覚。球団は関与した選手に契約解除などの処分を下した。日本野球機構の調査報告書では、八百長行為はなかったとされた。

国技である大相撲でも、22年に複数の力士による野球賭博が発覚し、警察の摘発を受けた。捜査の過程で、勝ち星を金銭で売買する八百長行為があったことも明らかになっている。

巨人の事件では胴元として暴力団組員が、大相撲の事件でも元大関から現金を脅し取ろうとした暴力団幹部がそれぞれ有罪判決を受けている。

一方、こうして事件化されるのは氷山の一角で、実態把握は困難との指摘もある。

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