足跡をたどる訓練をする指導手の栗崎栄さんと嘱託警察犬のサム=長崎県諫早市高来町で2024年11月10日午前11時5分、百田梨花撮影

 認知症高齢者らの行方不明問題が深刻化する中、警察犬が捜索に重要な役割を担っている。長崎県内の警察犬は高知県と並び全国最少タイの7頭。全てが普段はペットとして民間の人が飼っている嘱託警察犬だ。【百田梨花】

 「サーチ(捜せ)」。長崎市の運送会社役員、栗崎栄さん(58)が嘱託警察犬のシェパードのサム(雄、6歳)に指示した。サムは地面に残ったにおいを頼りに一歩一歩進む。遺留品が見つかると、栗崎さんはサムをなで回してほめた。栗崎さんは指導手の仲間たちと毎週日曜、諫早市高来町の空き地で嘱託警察犬の訓練に励んでいる。

 嘱託警察犬は、民間で飼育されている犬の中から審査会などで合格した優秀な犬と指導手を県警が嘱託し、行方不明者の捜索や事件捜査などの必要な場合に出動を要請する。出動には謝金を支払う。

 県警鑑識課によると、全国の都道府県警では、警察が犬を直接訓練・管理する直轄警察犬を導入し、嘱託警察犬と併用しているところが多い。長崎県警のように嘱託警察犬のみの運用は少数という。県警は直轄警察犬を導入できない理由として、予算面の制約を挙げる。

 一方、高齢化が進む県内では、行方不明者は増加傾向にあり、2023年で842件。県警鑑識課によると、足跡臭が残るのは市街地では4時間程度で、出動が早いほど発見できる確率が高まる。

 県内では今年、10月末までに警察犬が46件で出動し、うち3件で行方不明者が無事見つかった。犬が反応を強く示したのを手掛かりに山中から認知症の高齢女性を救助▽認知症の高齢女性が空き家で倒れているのを発見▽知的障害のある中年女性が道端で座り込んでいるのを保護――といった成果があった。

 栗崎さんは「警察犬による捜索で行方不明者を見つけられるのは経験上、1割程度。見つからない時には落ち込むが、一人一人を助けることを大切に訓練を続けていきたい」と語る。

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