バス運転手不足を大きな要因とする減便や路線廃止…都内ではAIや自動運転バスの導入に取り組む自治体も出てきている。

減便と廃止で輸送距離約4700万キロ減少

東京都によると、都内を走るバス事業者・主要13社の輸送距離は、減便や廃止に伴い、令和になった2019年に比べて約15%、約4700万キロ減少しているという。

利用客が減り、赤字路線になったこともあるが、大きな要因の1つがバス運転手不足がある。

いわゆる物流の2024年問題で、バス運転手不足が東京でも深刻化しており、高齢者が外に出かけにくい「交通空白地域」(バス停や電車の駅が近くにない地域)が増えている。

あるバス事業者は運転手不足に直面しているが、なるべく路線を廃止せず、減便でなんとか対応していると、現在の苦しい状況を語る。

「でかけにくい」交通空白地域

日野市では、今年4月から9月に路線バスの4系統で減便となった。

このままでは、コミュニティーバスの路線の一部廃止や減便にまで及ぶ可能性があると危機感を募らせている。

路線廃止や減便が進むと、高齢者を中心とした外出意欲の低下や地域活性化の妨げになる。

日野市の丘陵地では、外にでかけたいのに出かけにくいといった声が高齢者から出ていて、まさにそこは「交通空白地域」になっているエリアだという。

日野市では、こうした地域に対して、来年1月から利用者の予約によって運行するオンデマンド交通の実証運行を始める予定だ。

運転手は、タクシー事業者が担うことになっている。

また、足立区では今年3月、20年ほど続けてきたコミュニティーバス「はるかぜ」の12路線のうち、2路線が廃止された。
来年3月には1路線の廃止が決定している。

残る9路線の存続も危うい状況だったため、足立区では今年4月から7路線に対して、合計4億円の負担金を出して事業をなんとか継続させている。

新宿区で実証運行されている「にゃんデマンド」
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AIオンデマンド方式の新交通サービス

新たな取り組みとして新宿区では、AIオンデマンド方式の地域交通サービスを始めた。

8人乗りのキャラバンが、定められた44か所の乗降場所を回り、事前登録制のオンデマンド方式だ。

複数の予約を受け付ける際に、AIが適正なルートを選定してくれるという。
名前は、にゃんデマンド。

料金は1回につき、大人400円、子供200円、未就学児は無料。

利用した区内に住む主婦は、乗り心地もよくて、幼稚園の送り迎えがしやすくなると話している。

新宿区は、路線の廃止や減便の影響は区内ではまだ少ないものの、将来的には影響する可能性があるため、バス事業者と連携して新しい運行サービスを考えていくとしている。

杉並区で本格運行開始したグリーンスローモビリティー

さらに、杉並区では25日からグリーンスローモビリティー(通称グリスロ)の本格運用が始まった。

カート型は乗員5名 バス型は乗員7名の車両が荻窪駅南側地域の公園や庭園を周回する。

料金は1乗車100円(未就学児無料)で予約は不要。

グリスロは、時速20キロ未満の低速で電気自動車を利用した交通サービスで、都内では葛飾区、港区、品川区などで走っている。

杉並区は、自動運転化も視野に運行を実施していく。

来年1月から大田区で運行される自動運転バス

この他、大田区では来年1月から自動運転バスが区内の市街地を実証運行する。

運転手が必要に応じて運転するレベル2からスタートさせ、2027年度までに運転手なしのレベル4での運行を目指す。

ドライバー不足問題の解決策の1つとして注目を集めている。

路線バスの減便が相次いだ日野市は、東京都に対して人材を維持するために既存の公共交通の維持にも補助する制度の創設や運転士の人材確保施策を実施して、広域的に人材を確保する取り組みを行うよう要望した。

また、東京都も、国に対して来年度の予算編成のなかに、乗務員の待遇改善、負担軽減に向けた支援を盛り込むよう要求している。
(フジテレビ報道局社会部 大塚隆広)

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