ベトナムから来日し、事件によって娘を奪われた夫婦。悲しみの中、かつて娘が話してくれた夢を叶えようとしている。

<娘が大好きだった味>
福島県二本松市・岳温泉温泉街の一画。2023年にベトナム料理店がオープンした。
ベトナム出身のハオさんが、かつて旅館だった場所を改修した。「本場の味が地元で食べられるのは、すごくありがたい」「独特の香草の香りがたまらない」と客からも好評の、本場・ベトナムの味を作るのは妻のグェンさん。メニューはすべて、娘のリンちゃんが大好きだった味だ。

<亡き愛娘 戻ってきてほしい>
2017年・千葉県松戸市。リンちゃんは、当時小学校のPTA会長だった男に誘拐され、殺害された。
ハオさんは「元気に学校行ってから、戻ってくる姿見ることができないまま数年。まだ戻って来てほしい」と語る。妻のグェンさんも「今でも、リンちゃんを毎日思い出している」と語った。

<両国の良さを伝えたい>
リンちゃんを失った悲しみから、ベトナムへの帰国を考えた2人。しかし、リンちゃんの言葉が日本に留まらせた。
「大きくなったら、ベトナムの料理を日本の友達に食べさせてあげたい。ベトナムの人には日本の良さを伝えたい」
こう両親に話していたリンちゃん。店を作ってリンちゃんの夢を叶えてあげたいと思ったという。
「日本人にはベトナムの良さを」「ベトナム人には日本の良さを伝える」…リンちゃんの夢が今、夫婦を支えている。

<さらなる架け橋を>
料理店とは別に手掛けようとしているのが温泉宿。改修している旅館は、もともとすべてが畳の部屋だったが、ベッドも準備した。
ハオさんは「これからベトナムや外国人もいっぱい来ると思う。一部の方は畳に慣れていないから、両方を提供したい」と話す。
そしてもう一つ、ベトナムと日本の架け橋に向けて動き出している。福島県会津若松市の芦ノ牧温泉に、2店舗目の料理店をオープンさせる。

<ハオさんの福島への思い>
ハオさんには「福島」という場所にこだわる理由がある。東日本大震災・原発事故で被災した福島県の人々の姿が「理不尽な出来事」で最愛の娘を奪われた自分と重なった。だからこそ、福島のために出来ることを考えている。

<娘が見守ってくれている>
リンちゃんが亡くなり7年。娘が思い描いた未来を”福島”で叶える。
グェンさんは「ベトナム料理を日本人の方が食べてくれるのはとても幸せ。家族のレストランを、リンちゃんがいつも見守ってくれていると感じている」と話す。グェンさんは「私たちが娘に何をすれば償えるかわかりませんが、この店でリンちゃんの好きだった味を提供して、リンちゃんをみんなに覚えていてほしいと願っています」と話した。

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