秋田県の大仙市などで広く食べられてきた「納豆汁」の価値を改めて見直そうと、地元の親子が集まって食べる交流イベントが同市で開かれた。納豆汁は大曲地区の店などで提供しているが、店の数は限られる。関係者は「健康にも良く、もっと広く知られ、多くの人に親しまれていい存在。まず地元の人たちの認知度を高めていきたい」と意気込む。
納豆汁は秋田のほぼ全域と山形県北部、岩手県や青森県の一部で食べられてきた伝統食。家庭によって入れる具材や調理法はさまざまだが、秋田ではワラビなどの山菜に加え、きのこ類もふんだんに入れる。納豆をドロドロになるほど棒ですりつぶし、汁が煮立った後に鍋に流し込むと、納豆の香りが一層引き立つのが特徴だ。
秋田県中部は納豆との縁が深い。大仙市に隣接する横手市の金沢地区に「納豆発祥の地」の碑があり、美郷町には「おはよう納豆」で知られる「ヤマダフーズ」の本社もある。こうした土地柄だが、地元の道の駅や交流施設などでも納豆汁を提供する店は一部にとどまる。具材の種類が多いことや、納豆をすりつぶす作業に時間や手間がかかること、また納豆に対する好き嫌いが分かれ、採算面で不安が残ることも背景にあるとみられる。
こうした中、改めて納豆汁の価値を見直し、県内外の人に親しんでもらうことを目指し、元地域おこし協力隊の大森拓也さん(51)が中心になって10日にイベント「だいせんふるさとデー」を企画した。会場では、長年納豆汁を作り続けてきた地元の佐藤セツ子さん(77)の助言を受けながら、大鍋2杯の納豆汁を調理。小学生の親子ら約60人が集まり、おかわりを求める子たちが列を作った。
大曲地区では2009年ごろ、地元商工会議所青年部が納豆汁の広報に前向きに取り組んでいたが、その後の普及活動は停滞気味だ。
大森さんは「納豆汁は栄養も豊富で県内外だけでなく納豆に抵抗がない外国人も関心を持ちそうな料理だが、『食べたことがない』という声を地元でも聞く」と言う。今後については「うどんなどとの相性もきっといいはずで、創作の余地は大きい。定期的にイベントを企画し、まずは地元で身近な存在として根付かせていきたい」と話している。【工藤哲】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。