約700年前の鎌倉~室町期に使われていたとみられるトイレの跡が、鹿児島県阿久根市波留の諏訪ノ前遺跡で見つかった。土抗内の物質を分析したところ、野菜や寄生虫卵などが確認された。科学分析でトイレ遺構と判明したものは、九州南部(鹿児島、宮崎、熊本各県)では初めてという。
南九州道建設に伴い、鹿児島県文化振興財団が2023年度、標高34メートルのシラス台地上の遺跡6646平方メートルを発掘調査した。すると、直径約1・5~1・6メートル、深さ約1・3メートルの円形土坑6基が見つかり、内部に植物の種があることが判明した。
さらに6基のうち4基の土壌を調べたところ、2基から回虫や鞭(べん)虫の卵、大根などアブラナ科の野菜やソバ属の花粉、米、ゴマ、ヤマモモの種、貝殻などが見つかった。
回虫や鞭虫は卵が付着した生野菜を食べた人に感染したとみられる。これら寄生虫卵と食用植物の花粉が高濃度で検出されたことから、土抗がふん便の堆積(たいせき)するトイレ跡と判断した。直径約1・5メートルという穴の大きさから、当時は渡した板にまたがって使用していたとみられる。
熊本大の小畑弘己教授(考古学)は「鎌倉~室町期のトイレの様子や食生活、衛生環境を知る上で重要」と評価している。
発掘調査では、掘っ立て柱建物跡4カ所、縦穴建物跡1カ所、炉跡群1カ所も確認されている。【梅山崇】
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