次々と質問する住民たち=京丹後市丹後町の尾和区集会所で2024年4月25日午後7時45分、塩田敏夫撮影

 京都府京丹後市丹後町の米軍経ケ岬通信所と隣接の航空自衛隊経ケ岬分屯基地周辺が重要土地利用規制法で「特別注視区域」に5月15日から指定されるのを受け、市は25日夜、両基地がある尾和地区で住民説明会を開いた。特別注視区域になると、一定面積以上の土地売買には事前届け出が義務付けられる。区域内で「機能阻害行為」が見つかれば刑事罰が科されることになり、住民からは「機能阻害行為とは何か。何がアウトで何がセーフか」といった不安の声が次々と上がった。

 同法は外国資本による土地取得の懸念を背景に制定された。在日米軍や自衛隊などの施設を「重要施設」と位置付け、その周囲約1キロや国境離島を「注視区域」に指定し、自衛隊司令部など特に重要な施設周辺を「特別注視区域」に指定する。

 特別注視区域になると、200平方メートル以上の土地売買などは氏名、住所、国籍などの事前届け出が義務付けられる。区域内の重要施設の機能を阻害する行為「機能阻害行為」が見つかった場合、国は利用中止などの勧告・命令ができる。命令に従わない場合、刑事罰が科せられる。

 国会での議論の焦点となったのが、何が「機能阻害行為」に該当するか。基地周辺住民でつくる「米軍基地建設を憂う宇川有志の会」や「米軍基地反対丹後連絡会」は中山泰市長に対し、「地元住民の行動制限や監視活動がないようにしてほしい」などと申し入れるとともに住民説明会の開催を要望していた。

 約30人が参加した説明会では、市基地対策室の担当者が所管の内閣府の資料を基に概要を説明したが、住民からは「うちの田んぼの半分が区域内で、あとの半分が区域外の場合どうなるのか」などと次々に質問が出た。市は「個別の土地取引については内閣府のコールセンターに直接問い合わせてください」などと答えた。

 住民からは「何が機能阻害行為になるのか全然わからない」「国は基地の周囲1キロの土地を買い上げてほしい」と声が上がった。米軍経ケ岬通信所には早期警戒レーダー「Xバンドレーダー」を配備しており、「アマチュア無線の大きな基地局を(米軍基地近くに)作ったら(機能阻害行為に)あたるのか」との質問が出た。

 また、住民の一人は「日本弁護士連合会が機能阻害行為の要件自体があいまいで、恣意(しい)的な解釈による広範な指定がなされるおそれがあるなどとしてこの法律に反対する声明を出した」と指摘。「米軍基地のフェンスのそばを歩き、基地を見に行っただけで機能阻害行為とみなされる懸念、心配を抱いている」と訴えた。

 市は26日夜、尾和地区と隣接する袖志地区でも同様の住民説明会を開催した。【塩田敏夫】

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