原爆ドーム=広島市中区で、本社ヘリから加古信志撮影

 米国民は、過激な発言をくり返してきた前大統領の再登板を選んだ。米大統領選でドナルド・トランプ氏(78)が当選を確実にした6日、広島・長崎の被爆者や米軍基地を抱える沖縄からは、核軍縮や米中関係の先行きを懸念する声が上がった。

 トランプ氏は前政権時代、ロシアとの中距離核戦力(INF)全廃条約から離脱するなど核廃絶の流れに逆らってきた。広島で被爆し、国内外で証言活動をしてきた近藤紘子(こうこ)さん(79)=兵庫県三木市=は「女性を蔑視し、排他的な移民政策で知られる人物が、核兵器を使う決定権を持っていると思うと怖い。だからこそ、日本が米国と世界に対し核廃絶をはっきり主張していくことを期待したい」と話した。2016年に広島を訪問したオバマ元米大統領から抱擁を受けた被爆者の森重昭(しげあき)さん(87)=広島市=は「自国のことだけを考えていたら世界は良くならない」と批判。パレスチナ自治区ガザ地区で戦闘を続けるイスラエルを強く支持するトランプ氏に対し、「戦争に賛成し、助長するような人は国のトップになってほしくない」と語気を強めた。

 被爆者団体「長崎県被爆者手帳友の会」会長で医師の朝長(ともなが)万左男(まさお)さん(81)=長崎市=は「非常にがっかりした。トランプ氏は北朝鮮の核兵器保有を容認するような発言もしており、核軍縮に向けて一生懸命取り組むとは思えない」と語った。トランプ氏に対し、「核兵器が国や国民を守るという考え方を変え、核を二度と使わないという規範をしっかり守ってほしい」と注文した。

 核兵器のない世界を目指し、被爆者やNGOなどが参加する一般社団法人「核兵器をなくす日本キャンペーン」の専従スタッフで、米国の大学院で核政策などを学んだ浅野英男さん(28)は「トランプ氏の考えは予測できない側面が大きいが、これまでの共和党政権の傾向からも、核抑止をより強化する方向に行くのではないか」と懸念する。その上で、トランプ氏に対して「核兵器を持っている国の大統領として、被爆者が訴えてきた核の非人道性から目をそらさず、責任を持ってほしい」と求めた。【武市智菜実、根本佳奈、尾形有菜、椋田佳代】

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