国の重要有形民俗文化財に指定されている徳島市八多町の「犬飼農村舞台」で2日夜、阿波人形浄瑠璃と襖(ふすま)からくりの夜の公演が29年ぶりに復活し、一夜限りの演出が特別に披露された。
同市教委によると、江戸時代に庶民の娯楽だった人形浄瑠璃を演じるため、徳島県内では神社の境内に多くの農村舞台が建てられた。その一つの犬飼農村舞台は、当時の姿が良好な形で残っており、1998年に国重要有形民俗文化財に指定された。
夜公演は半世紀ほど前に途絶え、地元の保存会が毎年、昼の公演を実施するのみとなっていた。95年にテレビ番組の企画で夜間公演に携わった保存会の会員らが、29年ぶりに夜の公演を企画した。
この日の夜公演では、雨上がりの暗闇の中、ライトアップされて幻想的に浮かび上がった農村舞台で、「壺坂霊験記(つぼさかれいげんき)」という阿波人形浄瑠璃と、132枚の襖絵を使った「襖からくり」が上演された。
6歳の時に伝統芸能「三番叟(そう)」の「面持ち」役で夜の公演に出たという近くに住む金中(かねなか)君江さん(72)は「昼とは違って夜は周囲が真っ暗で、舞台に視線が集中できる。自分が出演した時は電球で暗かったが、今夜は照明が明るく衣装も襖絵も鮮やかできれいだった」と話した。【山本芳博】
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