国重要有形民俗文化財の「犬飼農村舞台」で29年ぶりに開かれた夜の公演=徳島市八多町で2024年11月2日午後7時半、山本芳博撮影

 国の重要有形民俗文化財に指定されている徳島市八多町の「犬飼農村舞台」で2日夜、阿波人形浄瑠璃と襖(ふすま)からくりの夜の公演が29年ぶりに復活し、一夜限りの演出が特別に披露された。

 同市教委によると、江戸時代に庶民の娯楽だった人形浄瑠璃を演じるため、徳島県内では神社の境内に多くの農村舞台が建てられた。その一つの犬飼農村舞台は、当時の姿が良好な形で残っており、1998年に国重要有形民俗文化財に指定された。

 夜公演は半世紀ほど前に途絶え、地元の保存会が毎年、昼の公演を実施するのみとなっていた。95年にテレビ番組の企画で夜間公演に携わった保存会の会員らが、29年ぶりに夜の公演を企画した。

 この日の夜公演では、雨上がりの暗闇の中、ライトアップされて幻想的に浮かび上がった農村舞台で、「壺坂霊験記(つぼさかれいげんき)」という阿波人形浄瑠璃と、132枚の襖絵を使った「襖からくり」が上演された。

 6歳の時に伝統芸能「三番叟(そう)」の「面持ち」役で夜の公演に出たという近くに住む金中(かねなか)君江さん(72)は「昼とは違って夜は周囲が真っ暗で、舞台に視線が集中できる。自分が出演した時は電球で暗かったが、今夜は照明が明るく衣装も襖絵も鮮やかできれいだった」と話した。【山本芳博】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。