【万引きGメン】「やっぱやるわ、やるやる!」
万引きをやめられない女たちと、Gメンの攻防戦に密着しました。
大量万引きの末、涙の懺悔。いったいなぜ?
■机に肘をつき、動揺する様子なし「生活が苦しいから…」と開き直り 店に謝罪の言葉もなし
年間の認知件数が9万件を超える「万引き」。店を困らせる悪質な犯罪行為です。
大阪市内のスーパーマーケット。
目を光らせるのが、この道20年、日本警備通信の万引きGメン・石原知典さんです。
店の通路を見渡していたGメンが動き出しました。万引きの気配を察したようです。
【万引きGメン 石原知典さん】「入れるんちゃう?入れますわ、たぶん」
白いTシャツの女が怪しいとみたGメン。
一見、普通の買い物客にしか見えませんが…。
Gメンは、いったい、何に気づいたのでしょうか?
女が目の前を通過したのはわずか3秒。
死角となる通路に入る瞬間に、トートバッグの持ち手を触ったのです。
ツイセキを開始!
【万引きGメン 石原知典さん】「(商品が)入らないですね、カバンに。財布を入れただけかもしれない」
そして、飲み物コーナーの棚では…。
【万引きGメン 石原知典さん】「ヤクルトファイブ、ふたつ」
商品は迷うことなく、買い物かごに。Gメンの思い違いだったのでしょうか…?
と!その時!
【万引きGメン 石原知典さん】「やっぱやるわ、やるやる!ヤクルトファイブですね、やっぱり」
Gメンが勘づいた通りに、白いトートバッグの持ち手を触って開き、ヤクルト2パックを一気に、入れたのです。
通路から出てくると…。
【万引きGメン 石原知典さん】「無くなってるでしょ、ヤクルトファイブ。やりましたね、ふたつ」
女はカゴの中身だけ、会計を済ませ…。
店を出たところで、Gメンの石原さんが声をかけます。
【万引きGメン 石原知典さん】「すいません 分かります?何で声かけられたか。ちょっと清算があえへんのちゃいます?」
70代の女が盗んだのは、パン・ヤクルト2パック、洗顔料のあわせて4点、1038円分でした。
女は机に肘をつき、動揺する様子は全くみられません。
というのも…。
【万引きGメン 石原知典さん】「捕まったこともあるの?あ~そう。この1個前は いつくらいに捕まったんですか?」
【万引き犯】「え?いつやろ?」
【万引きGメン 石原知典さん】「それはどこで捕まったん?」
【万引き犯】「あれ?どこやったっけ?え?忘れてもうた…どこやったっけ?」
過去の万引きも「忘れた」と言い張り、“反省”の様子はないようです。
【万引きGメン 石原知典さん】「何で『めんつゆ』は買ったのに、こっちは買わへんかったん?」
【万引き犯】「金銭的にちょっときついから。生活保護受けてる。光熱費とかもいるし…電気・ガス…、ガス代も上がってる」
ひとり暮らしで、生活保護と年金を合わせて月に11万円。「生活が苦しいから…」と開き直ります。
警察署で事情を聴かれることになった女。店に対して謝罪の言葉もなく、荷物をまとめます。
「万引き」は窃盗罪にあたり、10年以下の懲役、または50万円以下の罰金が科せられる犯罪です。
■店の常連「孫に買うたろうと思って」 犯行後に「また来てもいい?」と反省なし
続いて、Gメン石原さんの目に留まったのが…。
【万引きGメン 石原知典さん】「80歳くらいの女の人。カゴの手前にトートバッグを移動した。(カゴには)いまバナナ2本とそばしか入ってないですけど、バナナを置きたくてやったのか、意図的にやったのかは分からない。(トートバッグが)開いている気もするんですよね~」
「何か怪しい…」と感じたGメン、女についていきます。
【万引きGメン 石原知典さん】「ハイチュウ何個?1、2個、3個」
お菓子は買いものカゴの中へ。カゴの中には、白いトートバッグも入っています。
向かったのは惣菜売り場。ここは昼時で大混雑。
【万引きGメン 石原知典さん】「(お菓子をカゴの)めっちゃ手前にやってるんやけどな…。めっちゃ手前に持ってるねんけどな。入れた、入れた、入れた」
素早く、お菓子をトートバッグの中に入れる、その一瞬を見逃しませんでした。
女はカゴの中身だけ会計し、お金を払わずに、店の外へ。
【万引きGメン 石原知典さん】「こんにちは、お母さん」
【万引き犯】「うわ!うわ!何?」
【万引きGメン 石原知典さん】「お金払うの忘れてるの、あるんじゃない?」
【万引き犯】「忘れてへんよ、払ってきたよ」
【万引きGメン 石原知典さん】「ハイチュウとか買ってないやろ?」
【万引き】「…あ~!」
【万引きGメン 石原知典さん】「お店にだけ、謝りに行こう」
【万引き犯】「ここで払って来るから!払って来るから!」
【万引きGメン 石原知典さん】「あかん!あかん!警察ここに呼ばなあかんくなるから、お店に謝りに行こう」
【万引き犯】「ハイチュウだけや」
80代の女は店の常連客で、ほぼ毎日来ていました。
トートバッグからは、先ほどのお菓子3つと、練り物の梅焼きが。合わせて648円。
【万引きGメン 石原知典さん】「これも(梅焼)やろ? これ(ハイチュウ)3つと、(梅焼)2つやろ?」
【万引き犯】「これ(梅焼)は違います 買うたやつ」
【万引きGメン 石原知典さん】「違う違う!買ってない!なんで今まだうそつくん?何できょう、こんな事しちゃったん?」
【万引き犯】「孫に買うたろうと思って」
【万引きGメン 石原知典さん】「買ってないやん!」
【万引き犯】「はい、買わずでした」
【万引きGメン 石原知典さん】「こんなのお孫さんに食べさせたらあかんやんか」
【万引き犯】「…」
【万引きGメン 石原知典さん】「お孫さんいくつなん?」
【万引き犯】「ことしから就職したんです」
「この店で2年ほど前にも捕まったことがある」と明かしました。
【店員】「こうやって取られてたら、店としてはたまったもんじゃない」
【万引き犯】「取ったらあかんというのは分かっています」
【店員】「お金ないから?」
【万引き犯】「お金は持ってます」
財布には1万円が入っていました。
さらに、反省の様子がない80代の女の口から、驚きの言葉が…。
【店員】「今後、一切店に来ないでくださいね」
【万引き犯】「来たかったら、息子と一緒に来たら良い?」
【店員】「ダメでしょ」
【万引き犯】「安いものがあるからね、買いに来るねんけど」
【店員】「それはできない!そういうことをやっちゃった」
薄利多売のスーパーにとって、万引き行為による損失は死活問題。
それは、私たち、買い物客の財布にも影響することです
【店の責任者】「たまったもんじゃない。たかが600円、700円くらいでも、稼ごうと思ったら、結構な汗水垂らさないとさすがに無理。(販売価格に)上乗せする可能性もなくはない。金額が上がったりすることも無くはない。店としては損失だけで、何も出来ないっていうのは、さすがに…」
■「食べても吐いてしまう」障害理由に万引き 身元引受人は離れて暮らす高齢の両親
午後6時過ぎ、仕事終わりの客でにぎわう店内。
Gメンは、気になる客を見つけたようです。
黒いかばんの中を何やらゴソゴソする女。
【万引きGメン 石原知典さん】「(かばんに)いっぱい入ってますね。今、何か…デザート入れた」
女は商品を黒いかばんに、次々と入れているようです。
カゴの中身だけレジをすませて、店を出ました。
【万引きGメン 石原知典さん】「すいません。分かります?何で声かけられたか?こっち行きましょう」
素直に万引きを認めた50代の女。静かに涙を流し、反省している様子ですが…。
かばんの中からは、出るわ、出るわ、机がいっぱいに。一体どれだけ万引きしていたのか。
【万引きGメン 石原知典さん】「何でこんな事しましたん?」
【万引き犯】「…」
全身の震えが止まりません。
【万引きGメン 石原知典さん】「きょうは、ちょっとやりすぎたかなって感じ?」
盗んでいたのは、食料品ばかり20点。被害金額は7000円以上です。
身なりも整っていて、生活に困っているようには見えませんが。いったいなぜ?
【万引きGメン 石原知典さん】「何でこんなのしちゃうんですか?」
【万引き犯】「過食の気があって…」
【万引きGメン 石原知典さん】「食べたら吐いちゃうんですか?摂食障害があるんですか?病院行ってるんですか?」
【万引き犯】「前回、見つけられた時に…行きました」
【万引きGメン 石原知典さん】「治ったかなと思ってさぼってるんですか?病院」
【万引き犯】「すみません…」
摂食障害のひとつで、食欲をコントロールできず、短時間で大量に食べてしまう病気、「過食症」に苦しんでいると話します。
4年ほど前、この店で捕まったことをきっかけに、治療を始めたものの、いまは病院には行っていないとのこと。
【万引きGメン 石原知典さん】「前来た時より、取ってるんちゃいます?」
【万引き犯】「はい」
【万引きGメン 石原知典さん】「多いんですよ、正直、そういう人。頑張って治してるし、繰り返すことはないです。捕まった時にしか後悔しないでしょ。帰って食うんでしょ」
過食症で、食べたものを結局は吐いてしまうからと、万引きしてしまいました。
【万引き犯】「食べても吐いてしまって…。そういうものを買っていたら生活が苦しくなります」
【店員】「なら盗んでもいいと?」
【万引き犯】「だめです!」
身元の引受人は、離れて暮らす、高齢の両親だけです。
【警察】「ご家族さんの連絡先、教えてもらえる?」「これは誰の電話?」
【万引き犯】「両親です」
【警察】「電話したら家いてるかな?」
【万引き犯】「はぁ」
【警察】「泣いてても仕方ない。とりあえず落ち着こう」
万引きはダメと、分かっていたからこそ溢れ出る後悔。
しかし、決して許されない犯罪。その代償はとても大きい。
(関西テレビ「newsランナー」2024年10月31日放送)
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