危険運転致死傷罪は、悪質運転の厳罰化を目的に2001年の刑法改正で新設された。致死罪の最高刑は懲役20年と極めて重いが、事故の被害者や遺族らから適用のハードルが高いと問題視する声も出ていた。
危険運転致死傷罪創設のきっかけは、東京都世田谷区の東名高速道路で1999年に起きた飲酒運転追突事故だった。女児2人が亡くなったが、運転手は業務上過失致死傷罪などで懲役4年の実刑が確定。当時、同罪の最高刑は懲役5年だったこともあり、世間から「軽すぎる」との批判を受け、国が動いた。14年の自動車運転処罰法の施行時に刑法から移された。
だが、過失運転致死傷罪は過失責任を問うのに対し、危険運転致死傷罪はアルコールや薬物の影響で正常な運転が困難▽制御困難な高速度▽赤信号を殊更に無視――など計8種類の要件のいずれかに該当し、故意に人を死傷させた場合に限り適用される。立証が難しいとされてきた。
明確な基準のない「制御困難な高速度」では評価を巡って判断が分かれるケースが相次いだことから、事故の被害者や遺族らは23年7月、「高速暴走・危険運転被害者の会」を設立。悪質事故の被害の大きさと罪の重さが釣り合わないケースが生まれないよう、適用要件の明確化を訴える。法務省も有識者検討会を設け、24年2月から見直しに向けた議論を進めている。
こうした流れを受け、検察が積極的に危険運転致死傷罪を適用する動きもある。宇都宮市で23年にオートバイの男性が時速160キロ超の車に追突された死亡事故では、過失運転致死罪で公判中の被告に対し、宇都宮地検が10月10日、危険運転致死罪への訴因変更を請求。群馬県伊勢崎市で5月に起きた5人死傷事故でも、前橋地検が10月11日、「アルコールの影響で正常な運転ができなかった」と立証できると判断したとして過失運転致死傷罪から危険運転致死傷罪への変更を前橋地裁に請求し、それぞれ認められた。【神山恵】
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