群馬県内唯一の夜間中学として県立みらい共創中(伊勢崎市今泉町)が開校して半年あまり。4月に3学年で35人だった生徒数は、60人(10月31日現在)と倍近くに増えた。うち51人が外国人。「学びたい」理由はどこにあるのか。教室を訪ねた。【田所柳子】
なぜ今、大人たちが学び舎へ?
授業が始まるのは、平日の午後6時。日の落ちた校舎に「こんばんは」とあいさつが響き、10~70代と幅広い世代の生徒が登校してくる。授業は1コマ40分で、4時間目まである。国語や数学、理科といった義務教育の教科を学ぶ。
「この中学ができて、本当に良かった」と顔をほころばせるのは、ペルー出身の仲間イバノバさん(54)。35年前に来日。日本での大学進学を目標に、県内でいくつかの専門学校に通った。しかし、十分な学習ができた手ごたえはなく、悩んでいた。
みらい共創中では体系的に教科を学び、日本語の勉強もできる。授業の日本語がわからない生徒には、通訳支援員が付き添う。仲間さんは苦手だった漢字も上達し、夢に近づけた実感がある。「この中学の体験は貴重だ。私だけでなく他の生徒も皆、学校が大好き」
学校の評判はコミュニティーの中で広がり、ペルー国籍の生徒は5人から13人に増えた。来日手続きをする市役所やNPOの紹介で入学するケースも増加。日本語指導のための教室は、3部屋から4部屋に増えた。
生徒の国籍は、ペルー13人、ブラジル、フィリピン各10人、日本9人、ネパール4人など。最初は国別のグループができたが、次第にうちとけ、休み時間には国の垣根を越えて談笑する姿がみられる。
仲間さんの友人で、ブラジル出身のナカタエライネさん(45)は子ども2人が日本の学校になじめるよう、通い始めた。7年前に来日。中学1年生と保育園児の子がいて、それぞれの担任と意思疎通するため「日本語が上手になりたい」と思った。「理科の授業が楽しい」といい、自らが学ぶことで、子どもの宿題を手伝えるようになりたいと願う。
学校風景の中に「学びの原点」
10月上旬、日本語教室をのぞくと、モニターに映っていたのは、バングラデシュカレーのメニューだった。
「ニハリ」という料理について、南アジア出身の生徒が「これはおいしい」「骨ごと長く煮込むのでカルシウムが取れる」と英語で説明。英語が聞き取れなかった南米出身の生徒は、別の生徒に通訳してもらい、納得した顔をした。
お互いが助けあう和やかな雰囲気の中、教師が「バングラデシュ料理は好きですか」「はい」という日本語の会話を紹介。皆でそろって復唱した。
教職員は16人。夕方になると、手がすいているほとんどの教員が校門に立ち、生徒を出迎える。帰りは「またあした」と声をかけて見送る。
飯嶌幸校長は「教職員もやりがいを感じている」と語る。県内初の夜間中で、教育方法は手探りな部分もあるものの、生徒から「学校は楽しい」と聞く度に「学びは本来楽しいもので、それぞれの思いをかなえる場という原点を確かめている」という。
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