茨城大の西川邦夫准教授=茨城県阿見町で2024年10月9日午前11時41分、福富智撮影

 コメが品薄となり、価格が急騰した「令和の米騒動」――。農水省は30日に問題の検証結果を公表したが、事態の再発防止に向けて農政はどうあるべきか。茨城大の西川邦夫准教授(農業経済学)に聞いた。【聞き手・福富智】

 ――コメ騒動の原因は。

 ◆いろいろな議論があるが、単純に需要に対して供給が足りなかったということに尽きる。国は2023年7月~24年6月の主食用米の需要を約680万トンと予想していたが、結果的には約700万トンだった。その背景にはインバウンド(訪日観光客)の増加や、(値上がりが続いた小麦などと比べた)コメの値ごろ感などがある。

 一方、主食用米の23年産米の生産量は約660万トンと少なかった。高温障害の影響で白濁米は多かったが、収穫量は平年並みで不作ではなかった。

収穫される新米=佐々木順一撮影

 ――なぜ供給不足になったのでしょうか。

 ◆半世紀以上続く政府の生産調整の結果だ。主食用米の作付面積を減らして、別の他の作物を作っている。国は18年以降は生産量の直接的なコントロールを廃止した。だが現在でも補助金や地方自治体・農協への情報提供や指導を通じて間接的に生産量をコントロールしている。今回の事態もその誘導が強く効き過ぎた結果だ。

 ――生産調整は正しい政策なのでしょうか。

 ◆コメの生産者が代わりに何を作付けするかを判断する時に、「補助金が多いから作付けをしよう」という行動様式になってしまっている。本来ならば市場の動向に合わせて判断することが農業経営者にとって重要だが、それが働かないことは非常に問題だと思う。制度の見直しや廃止に向けた動きはあったが、政治的な要因で続いてきた。ただ、生産調整を急にやめると、(補助金が支えとなってきた)転作作物である非主食用米や麦、大豆などを中心としてきた農業経営や加工業者が立ち行かなくなるため、段階的に生産調整は廃止していくべきだ。

茨城大の西川邦夫准教授=茨城県阿見町で2024年10月9日午前11時41分、福富智撮影

 ――コメ不足に素早く対応する方法はないのでしょうか。

 ◆事後の対応としては、非主食用米を主食用米として利用することを認めることだ。加工用米などの非主食用米は現在、110万トン(備蓄用米を除く)ぐらい生産されており、それが融通できれば今夏のようなことはまず起きない。

 ――今夏の米不足が解消したはずなのに米価は今も高止まりしています。

 ◆(原材料高など)生産コストの上昇を反映しており、現在の価格は妥当だという見方もある。ただ、現在の価格上昇によって、需要が減少する懸念がある。消費者が価格に敏感なことを考えると、現在の価格水準が今後も続くのかは疑問だ。

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