10月27日、衆議院選挙が行われ、自民公明両党は過半数を割り込みました。
北海道でも前回の衆議院選挙では12選挙区で自公7選挙区、立憲5選挙区だったものが、自民が3議席、立憲が9議席となりました。
立憲が躍進した一方、前回に比べ自民党は大幅に議席を減らしました。
背景にはやはりあの問題がありました。
裏金問題で注目の北海道5区
「ひとえに私の不徳の致すところ。10万を超える票を投じてくれた皆さんに申し訳ない」(自民・前 和田義明さん)
力のない表情で語るのは、北海道5区から出馬し落選した自民党の和田義明さん。外務大臣や官房長官などを歴任した義父・町村信孝さんから地盤を引き継いで3期8年。守り続けてきた選挙区を失いました。
自民党・安倍派が政治資金パーティーの収入を収支報告書に記載していないことが明るみになり、東京地検特捜部が強制捜査に踏み切った裏金問題。
北海道選出の国会議員は4人が該当し、和田さんは990万円の不記載が明らかになりました。
「衆議院を解散する」
和田さんは裏金問題をめぐり、比例との重複立候補が認められませんでした。小選挙区で敗れたら復活が叶わない「背水の陣」となりました。お詫びから入る異例の選挙戦でした。
「収支報告書不記載の問題で多大なるご心配をお掛けしました。皆さま方には心からお詫びを申し上げます」(自民・前 和田義明さん)
選挙戦では「政治とカネ」がクローズアップされました。
「今回は勝たせてはいけない選挙だ」(立憲・池田真紀さん)
逆風の選挙戦で、和田さんには裏金や脱税といった言葉が浴びせられることもあったといいます。
「地域の発展、皆さまの未来のために和田義明とスクラムを組んでくれませんか。和田義明を勝たせて下さい」(自民・前 和田義明さん)
かつてない厳しい戦いに総裁も駆け付けました。
「もう一度自ら公平公正で謙虚な政党。そして再出発をしていかねばならない」(自民 石破茂総裁)
保守の牙城「町村王国」ですが、今回は立憲民主党の候補が序盤からリード。さらに終盤には非公認候補へのいわゆる2000万円問題もクローズアップされ、厳しい戦いが続きました。
しかし、立憲民主党の候補に約2万5000票の大差をつけられ落選しました。有権者は裏金問題に厳しい判断を下しました。
「(Q:裏金、影響した?)違う政党に投票した」
「一度過ちをすると信頼関係がなくなってしまう」(有権者)
比例重複もなく議席を失った和田さん。町村さんへの思いを聞かれると。
「(Q:敗れたことを町村さんはどう思うと思う?)どう言いましたかね…想像もつきませんが、妻とも相談してみます」
「(Q:どう報告する?)申し訳ないと町村の父にも言いたいし、町村がこれから私がどうすべきと考えるか、昔の記憶をたどって妻と一緒に考えたい」(いずれも自民・前 和田義明さん)
「自公連携」の象徴区にも影響
「今の状況から見て起こるべくしてそうなった」(60代)
「国民の審判が下ったという感触はあった」(60代)
自民党の候補に吹き荒れた逆風。「政治とカネ」をめぐる問題の火の粉は「自公連携」の象徴区にも振りかかりました。
「政治資金の問題で有権者の方々の関心が高かったんじゃないだろうかと思っている」(道10区落選 公明・稲津久さん)
岩見沢市などの北海道10区で落選した公明党の稲津久さん。党の代表が2回も北海道入りしましたが、議席を失いました。
道4区にも「裏金問題」の影響が広がる
こちらは北海道4区。「裏金問題」の影響が広がっていました。
「あの『2000万円問題』は非常にブレーキがかかった。国民感覚と全く外れているという風に私も思った」(道4区落選 自民・中村裕之さん)
自民党道連トップの中村裕之さん。自身は裏金問題の当事者ではありませんが、札幌市西区や小樽市などの北海道4区で落選。比例復活したものの、非公認とした候補の支部に対し、政党助成金2000万円を支給していた党本部への一連の対応に疑問を口にしました。
道7区当選 鈴木貴子さんは“悔し涙”
自民党の大敗を受けて、選挙協力したこの人は…
「裏金問題、さらに選挙戦の後半になってから2000万円の公認料の問題が出てきた」(参院議員 鈴木宗男さん)
「言葉が出て参りません。仲間たちの無念を思うと、喜んではいられない」(道7区当選 自民・鈴木貴子さん)
釧路市や根室市などの北海道7区で当選した鈴木貴子さん。勝利のあいさつで最初に流したのはうれし涙ではなく、悔し涙でした。
「自民党を立て直す。私が立て直していく」(道7区当選 自民・鈴木貴子さん)
裏金問題で自民党は大きな分岐点を迎えています。
立憲が大躍進 12議席獲得
自民党と公明党が議席数を減らした一方で…。。
午前8時、音更町。北海道第11区で3回目の当選を果たした立憲民主党の石川香織さんは、街頭で感謝の思いを伝えていました。
「お世話になった人がたくさん通って、ちゃんと目を合わせて手を振ることができましたので、これからたくさんの皆さんに決意を伝えたい。与野党折衷する国会を作れそうなので、ここからが勝負かなと思っている」(道11区当選 立憲・石川香織さん)
3年前(2021年)の衆議院議員選挙では、北海道で立憲民主党が確保した議席は、20議席のうち小選挙区と比例合わせて8議席。自公に抵抗を見せました。
今回、立憲が獲得したのは全体で12議席。自公の地盤を制したり、惜敗して比例復活するなど、小選挙区の立候補者全員が当選を果たしました。
「ありがとうございます。おはようございます。ありがとうございます」(道5区当選 立憲・池田真紀さん)
北海道第5区で当選した立憲民主党の池田真紀さん。過去3回、自民党の和田さんに敗れていましたが、初めて勝てた要因をこう分析します。
「今回、裏金にスポットが当たりましたけど、お金の使い方が国民の暮らしとギャップが大きすぎることに対する怒りだと感じています」(道5区当選 立憲・池田真紀さん)
北海道第4区で自民党道連のトップを破った立憲民主党の大築紅葉さんは…。
「とにかくこの3年間、徹底的に現場を回ってきた。特に人口減少が激しい地域もたくさんあるので、課題解決に力を尽くしていきたい」(道4区当選 立憲・大築紅葉さん)
立憲民主党の北海道連代表で、北海道第8区で当選した逢坂誠二さん。躍進したからこそ責任は重いと話します。
「この国の課題の多さ、それにどう取り組むかの重圧の方が大きい。これから、どこの党とどうパートナーを組むかが次への難しさ。立憲民主党だけでは解決できない問題にも取り組むことができる」(道8区当選 立憲・逢坂誠二さん)
”政権交代こそ、最大の政治改革”と掲げ、挑んだ今回の選挙戦。政治とカネ、物価高や人口減少など、課題が山積みの中、立憲民主党が有権者の期待にどう応えていくのか、注目です。
基幹産業である1次産業の受け止めは…
今回の自民党の大敗、立憲民主党の躍進を受けて、今後、北海道へどう影響がでてくるのか…。
「農産物すべてが価格転嫁できない状況が続いていたから非常に厳しい」(酪農業 井下英透さん)
食料自給率「1100%」を誇る日本最大の食料基地・十勝。衆院選の大きな争点となった物価高は、酪農や畜産の経営を圧迫しています。
「安心で安全な食料を届けるという思いでやっている。大切さを理解してほしい」(酪農業 井下英透さん)
北海道経済界は「政治の安定が経済成長の基盤。早期の態勢強化を期待する」とコメント。
進展のない北方領土問題に焦り
また、北海道内の大きな課題のひとつが北方領土問題。進展がなく、元島民は焦りを見せています。
「北方領土返還運動に、これからの若い人たちがどう向き合ってくれるのか」(元島民 角鹿泰司さん)
元島民はおよそ5千人で平均年齢は89歳。終戦後に7割以上が他界していることから、早期の解決を期待します。
「北海道は立憲の野党の人が多くなった。根室、北方領土の状況を勉強してほしい」(元島民 角鹿泰司さん)
選挙結果が北海道に与える影響は…
政治とカネの問題で自民党に吹き荒れた逆風。立憲民主党が躍進しましたが、この結果が道内にもたらす影響を、専門家はどう見ているのでしょうか。
「一気に世代が若返り政権中枢との距離感ではやや不安もぬぐえない。北海道の利益を中枢に反映していくルート深刻な問題として残ってくるかも」(北海学園大学 山本健太郎教授)
与党が過半数に届かなかったことから、新たな政権の枠組みにも注目が集まります。
「じり貧の石破政権がダラダラと続くのが現実的にありそうなシナリオ。決められない政治の方向に向かってしまう可能性を非常に懸念。ちょっと辛抱しなければいけない。その覚悟は決めておいた方がよさそう」(北海学園大学 山本健太郎教授)
果たして北海道、日本の未来の形は…。
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