外国人観光客の増加で観光業界が活気を取り戻す一方、「常連客が店に入れない」という影響も出ている。コロナ禍の厳しい時期を支えてくれた地域住民のために、ある決断に踏み切った広島のお好み焼き店を取材した。

ネットの口コミで外国人観光客が行列

多くのスーツケースが並ぶJR広島駅。笑顔を見せる外国人やカフェの前でくつろぐ外国人の姿も。県内のインバウンド需要はコロナ禍前の2019年から「V字回復」している。

多くの外国人観光客でにぎわうJR広島駅
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観光客に人気の広島名物といえば、お好み焼き。オンライン上の口コミで話題のお好み焼き店「もみじ亭」には、この日も店の外までズラリと外国人観光客が並んでいた。店のある3階へと階段をのぼると、壁の至るところに英語の案内が張られている。

ビルの3階にあるお好み焼き店「もみじ亭」(広島市中区)

加藤雅也 キャスター:
行列がすごいですね。並んでいるのはインバウンドのお客さんばかり。音声案内で英語のアナウンスも流れています

「あ~、ソーリー。予約はできません」
「2人ですか?外でお待ちください」
店のスタッフは英語での接客に慣れている様子。外国人の客が1組帰っては、次に訪れる客も外国人。店内にはさまざまな国の言語が飛び交っていた。

お好み焼き・鉄板焼き「もみじ亭」・藤原良太 店長:
今日はいろいろなところから来ていますね。アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、スペイン、メキシコ、韓国…チリの人もいました

「本来のサービスを提供できない」

観光庁の「宿泊旅行統計調査」によると、広島県内に宿泊した外国人の数は2023年夏以降、コロナ禍前の2019年を上回る勢いで推移している。

外国人観光客:
みんな、グーグルでこの店をすすめているわ

外国人観光客:
地元のこぢんまりとしたお好み焼き店を探して、オンラインでこの店に行きつきました

そんな中、外国人観光客の行列に混じって並び、やっとの思いで入店した“常連客”の姿があった。

常連客:
外国人客がめちゃくちゃ増えています。前に来たときは6時に並んで8時半に店に入れたので…

個人経営でスタッフは店長と従業員の2人のみ。これまで多くても1日40人ほどだった客が、今では連日100人を超え、常連客もすぐには入れない状況になっている。店先の張り紙には英語と日本語で“店主の思い”がつづられていた。

「現在、あまりにも多すぎる来客のため本来のサービスを提供できない状況となってしまっております」

週1日でも常連客の憩いの場に…

オープン以来、地域密着を掲げてきた店主は苦渋の決断を迫られていた。

お好み焼き・鉄板焼き「もみじ亭」・藤原良太 店長:
コロナ禍などの厳しいときを支えてくれた常連さんたちが入れない店というのは、私たちとしても違うかなという思いがあります

そこで、4月からスタートさせたのが「県民の日」。毎週金曜日の夕方5時以降を県内に住む人限定にする“入店規制”だ。県内在住かどうかは客の自己申告にまかせているが、地元の人を大切にしたい思いからの取り組みである。

毎週金曜日に出される「県民の日」の案内

4月19日金曜日の夜、店内は“なじみの客”で埋まっていた。小さな鉄板を挟んで店長と常連客が笑い合っている。

お好み焼き・鉄板焼き「もみじ亭」・藤原良太 店長:
インバウンド客の入店を断るため、下手したら人種差別だと捉えられる危険性のある取り組みですが、ずっと来てくれているお客さまにとってここは楽しみの場。安らぎの場と思ってくれるお客さまも多々いるので、そういう人たちの場所を週に1日でもいいので守っていきたい

「県民の日」に店を訪れ、お好み焼きを食べる地元客

常連客:
店長が忙しすぎると話す余裕ないもんね。久々にちゃんと会話した気がする

地元客を大切にする一方で、広島を訪れる観光客に不快な思いをさせないことも大切だ。混雑を分散しサービスの質を上げるための入店規制であると、いかに理解してもらうか。新たなオーバーツーリズム対策の行方に注目したい。

(テレビ新広島)

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