秋の到来を告げるスズムシの鳴き声。県立熊谷農高(熊谷市大原3)は、60年前から生徒が飼育したスズムシを皇室に献上してきた。今年も150匹を贈ったが、例年、県庁第2庁舎(さいたま市浦和区)などにも届けられ、涼やかな音色が働く職員たちに好評だという。
同校では農業学習の一環でスズムシを飼育しており、1964年からは毎年、皇室に献上してきた。今年は、いずれも3年の松澤玲碧さん(17)、佐藤瑞樹さん(17)、小林桃花さん(18)ら有志が中心となって育て、約1500匹が羽化。そのうち約300匹を県庁などに届け、知事室や廊下などに展示されているという。
スズムシの寿命は約2カ月程度で、通常の気候で飼育すると、4月下旬には羽化し、秋が来る前に死んでしまう。そこで気温が低い地下室で卵を保管して、5月下旬~6月中旬ごろに羽化するように調整するという。
羽化後のスズムシに、生徒有志らが校内の畑で収穫したナスをあげるなど世話をしてきた。夏までに7~8回の脱皮を繰り返して成長し、8~9月ごろに一斉に鳴き始めると、耳鳴りかと思う程だという。
佐藤さんは「湿度が高すぎるとカビが生えるため、ケース内の掃除を小まめにするなどの管理が大変」と振り返る。松澤さんは「多くの人にスズムシの鳴き声を聞いてもらえるのがやりがい。今年は個体数が少ないけど鳴き声は大きい」と話している。【安達恒太郎】
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