親を亡くしたり、親が重い障害で働けなかったりして、学費の工面が困難な高校生に奨学金を給付するあしなが育英会(本部・東京都)の「あしなが高校奨学金」の申請者が急増している。申請者の増加に資金が追いつかず、県内でも2年連続で申請者の半数以上が奨学生として「不採用」となった。27日投開票の衆院選で主要政党は「教育無償化」を公約に掲げるが、進学が困難な若者に支援が行き届いていない現実は深刻化している。
あしなが育英会によると、返済不要の高校奨学金(月額3万円給付)の申請者数は、全国的に増加傾向だという。24年度は前年度の2629人から3割以上増え、過去最多の3487人にのぼった。しかし、資金不足で全員に支給できず、奨学生として採用できたのは半数に満たない1538人(採用率44・1%)だった。
このうち、県内の申請者は45人で、前年度の25人から大幅に増加。記録の残る15年度以降では過去最多で、採用はわずか17人(採用率37・8%)にとどまった。前年度の採用は10人(採用率40%)で、2年連続で申請者の半数以上が不採用となった。
申請が増えている背景として、物価上昇が遺児家庭の家計を圧迫している現実がある。同育英会が今年7月、全奨学生の保護者5179人にアンケート調査をした結果、「前年の同時期と比べ、収入が変わらない」と回答した遺児家庭が57・3%、「収入が減った」は28・2%だった。また「収入が物価上昇をカバーできていない」という遺児家庭は94・2%に上った。
アンケートには「まともな食事は夕食だけにしている」「冷房は我慢して使わない」といった声も寄せられ、健康を犠牲にするような「節約」に努める親の姿も浮き彫りになった。主要政党は衆院選の公約で軒並み「教育無償化」を掲げるが、同育英会職員の八木橋美郁さんは「授業料だけでなく、部活や修学旅行などにもお金がかかる。1人親家庭では親がフルタイムで働きづらいケースも多く、十分な収入を得られるよう1人親でも働きやすい社会や環境を実現することも考えてほしい」と話す。
こうした現実を広く知ってもらい、採用枠を少しでも増やそうと、同育英会の奨学生らでつくる「あしなが学生募金事務局」は今月、土曜と日曜に街頭募金活動を行っている。26、27日は正午から午後6時、JR宇都宮駅の東西自由通路で奨学生やボランティアの学生が参加する。事務局は「1人でも多くの人に奨学金を届けられるよう協力してほしい」としている。
同育英会は、クレジットカードやネットバンキング、郵便振替などでも寄付を受け付けている。詳細はホームページhttps://www.ashinaga.org/support/か、フリーダイヤル(0120・916・602、平日午前10時~午後4時)へ。【小林祥晃】
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