首相官邸前の柵に突っ込んだ車を調べる警視庁の捜査員ら=東京都千代田区で2024年10月19日午前9時、和田大典撮影

 19日午前5時45分ごろ、東京都千代田区永田町1の自民党本部前で、男性が火炎瓶のようなものを5本ぐらい投げつけた。一部が本部の敷地内に落ちるなどし、本部の外側や警戒中だった警視庁機動隊の車両が焼けた。

 男性は現場から白のワンボックスカーで逃走し、約5分後の5時50分ごろ、首相官邸の敷地に突入しようとしたが、警備用の柵にぶつかって停車。発煙筒のようなものを警備中の警察官などに複数回投げつけ、乗ってきた車の中にあった着火物も燃やした。

 男性はその場で警察官に身柄を確保され、公務執行妨害容疑で現行犯逮捕された。

 警視庁によると、男性は埼玉県川口市の職業不詳、臼田敦伸容疑者(49)。黙秘しているという。2カ所の現場ともに、けが人はいなかった。

容疑者の行動

 捜査関係者によると、臼田容疑者は自民党本部に車で近づき、降車していたという。使用された車の中にはカセットコンロのようなものや、10個ほどのポリタンクが積まれ、未使用の火炎瓶のようなものも見つかった。火炎瓶は手製とみられる。発煙筒のようなものも複数本残っていた。

 臼田容疑者は、過去に原発再稼働に反対する活動に関わっていたとの情報もあるといい、警視庁公安部が動機や事件に至る経緯を調べている。

 国政選挙では近年、政治家が期間中に襲撃される事件が相次ぎ、警察当局が警備を強化していた。

 2022年7月には、安倍晋三元首相が奈良市内で参院選の街頭演説中に後方から銃撃され、死亡した。奈良県警の警備計画では、後方からの銃撃を十分に検討せず、事件発生時に後方を重点的に警戒する警察官もいなかった。

 警備態勢の甘さが問題視され、要人訪問時の警備計画は都道府県警が作成したものを警察庁がチェックする仕組みが導入された。

 さらに23年4月には、和歌山市で衆院補選の応援に入った岸田文雄首相(当時)に向け、爆発物が投げ込まれる事件が発生した。岸田氏にけがはなかった。【木下翔太郎、朝比奈由佳、三上健太郎】

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