大阪地検特捜部に逮捕され、無罪が確定した不動産会社「プレサンスコーポレーション」(大阪市)の山岸忍元社長が国に損害賠償を求めた訴訟を巡り、最高裁第2小法廷(草野耕一裁判長)は、特捜部が取り調べを録音・録画したデータ約17時間50分の提出を国に命じる決定を出した。約48分間に限って認めた大阪高裁決定を破棄した。16日付。裁判官4人全員一致の意見。
提出の可否が争われたのは、山岸氏の元部下に対する取り調べの映像。元部下は逮捕当初、事件への山岸氏の関与を否定したが、途中で関わっていたと供述。山岸氏の刑事裁判ではこの供述の信用性が否定され、無罪が言い渡された。
山岸氏は大阪地裁に起こした国家賠償訴訟で、検事が元部下を脅迫し、虚偽の供述を引き出したと主張。取り調べ状況を明らかにするために録音・録画データの提出命令を出すよう大阪地裁に申し立てた。
地裁は2023年9月、証拠としての必要性が高いとして約17時間50分の提出を命じた。これに対して大阪高裁は24年1月、取り調べの書き起こしでも検事の口調を把握することは可能で、録音・録画データの提出により、元部下のプライバシーが侵害される恐れがあると判断。提出命令の範囲を山岸氏の刑事裁判で既に流されている約48分間に絞り、山岸氏側が特別抗告した。
小法廷は、国賠訴訟では検事の言動が部下の供述に与えた影響が激しく争われており、映像には検事の言動が口調や声の大きさを含めて取り調べの様子が正確に記録されていると指摘。地裁の判断には「一応の合理性が認められる」と述べた。
元部下を取り調べた検事は、特別公務員暴行陵虐罪で刑事裁判にかけられることが決まっている。【巽賢司】
弁護団「影響大きい」 最高裁決定を評価
最高裁決定を受け、山岸氏の弁護団は「刑事裁判で証拠として提出されなかった録音・録画についても提出を命じたもので、訴訟の実務に与える影響は大きい」と評価。映像には検事が怒鳴ったり、机をたたいたりする場面も含まれており、「同様の取り調べが根絶することを強く願っている」とのコメントを明らかにした。
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