JR九州高速船の「クイーンビートル」に家宅捜索に入り、押収した資料を運び出す海保の捜査員ら=福岡市博多区で2024年10月17日午後0時20分、野田武撮影

 JR九州の子会社「JR九州高速船」(福岡市博多区)が日韓を結ぶ高速船「クイーンビートル(QB)」の浸水を隠して運航を続けた問題で、福岡海上保安部は17日、船舶安全法違反(臨時検査不受検航行)と海上運送法違反(安全管理規定違反)の容疑で同社や船内を家宅捜索した。

 JR九州高速船は2024年2月にQBの浸水を確認したが、国土交通省への報告を怠り、3カ月以上にわたり運航を継続。5月に初めて浸水を認識したように装い、国交省九州運輸局に報告した。

 だが、国交省が8月に実施した抜き打ち監査で隠蔽(いんぺい)が発覚。浸水を検知しないよう警報センサーをずらしたり、航海日誌に「異常なし」とうその記載をしたりしていたことも明らかになり、JR九州高速船の前社長の指示だったとした。QBは8月13日から運休している。

 こうした問題を受けて同省は9月、JR九州高速船に対して海上運送法に基づく行政処分の安全確保命令と安全統括管理者・運航管理者の解任命令を出した。JR九州高速船は、別の浸水トラブルの後に必要な検査を受けていなかったとして23年6月にも安全確保命令を受けており、国交省は今月末までに再発防止策を報告するよう求めている。

 海保が強制捜査に乗り出したことで、今後は刑事責任を問われる可能性がある。海保は家宅捜索で押収した資料を分析し、隠蔽工作の全容解明を進めるとみられる。臨時検査不受検航行の罰則は1年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金。安全管理規定違反の罰則は100万円以下の罰金。

 家宅捜索を受けてJR九州の広報担当者は「海上保安部の捜査に真摯(しんし)に対応します」とコメントした。【栗栖由喜、下原知広】

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