不動産取引をめぐる21億円の横領事件で、罪に問われた男性がその後の裁判で無罪となった冤罪事件。
問題が指摘されている、大阪地検特捜部の取り調べの録音録画について、最高裁判所が大阪高等裁判所が認めた範囲より拡大して、民事裁判に提出すべきという内容の決定を出しました。
特捜部の取調べ映像の提出範囲をめぐって、最高裁判所が判断を示すのは今回が初めてです。
「プレサンスコーポレーション」の元社長・山岸忍(やまぎししのぶ)さんは、土地取引をめぐり部下らと共謀して21億円を横領したとして大阪地検特捜部に逮捕・起訴されました。
特捜部は山岸さんについて、元部下らの供述をもとに、有罪を立証しようとしましたが、裁判の中で、長時間の威圧的な態度や言葉による取り調べが明らかになり、山岸さんの関与を示す供述は「信用できない」として無罪となっていました。
山岸さん側は「違法な取り調べで冤罪が作られた」と国に損害賠償を求めて裁判を起こし、取り調べの録音・録画を提出するよう求め、大阪地裁は去年9月、「4日間・およそ18時間分の提出を命じました。
これに対し国側は、取り消しを求めて即時抗告し、ことし1月大阪高裁は、「1日・48分間分」のみと、大幅に範囲を限定して提出するよう命じる決定を出していました。
これを受けてことし6月の裁判では、法廷でその録画録音の内容が流されていました。
<流された内容>
【山岸さんの元部下の取り調べを担当 田渕検事】「なんで、そんなことしたの。それ何か理由があります?それはもう自分の手柄が欲しいあまりですか。そうだとしたらあなたは、プレサンスの評判を貶めた大罪人ですよ」
【田渕大輔検事】「これ例えば会社から今回の風評被害とか受けて、会社が非常な営業損害を受けたとか、株価が下がったとかいうことを受けたとしたら、あなたはその損害を賠償できます?10億、20億じゃすまないですよね。それを背負う覚悟で今、話をしていますか」
最高裁判所(第二小法廷・草野耕一裁判長)は17日の決定で、「(山岸さんの元部下の取調べを行った)田渕検事の言動が非言語的要素も含めて機械的かつ正確に記録された録画部分は、その反訳や証言と比較して、格段に多くの情報を含んでおり、また、より正確性が担保されていることが明らかである」と指摘。
48分間だけの映像の提出だけを認めた大阪高裁の決定を棄却し、新たに約17時間分の取調べ映像を裁判で提出するよう命じました。
これによってすでに裁判に提出された48分とあわせておよそ18時間分の録音録画が裁判に提出されることになります。
新たに提出が命じられた範囲には、元部下に対して田渕検事が机を叩いたり、大声で怒鳴り続けて取調べをしている部分が含まれています。
(以下、弁護団監修のもと再現した内容)
<検察官が右手を自分の顔のあたりまで振り上げる。
そして、振り下ろし手の平で机を1回たたく>
【田渕検事】「嘘だろ!今のが嘘じゃなかったら何が嘘なんですか!」
【田渕検事】「もう起訴ですよ、あなた。っていうか有罪ですよ、確実に」
【田渕検事】「命かけてるんだよ!検察なめんなよ!命かけてるんだよ、私はかけてる天秤の重さが違うんだ、こっちは」
取り調べを行った田渕検事に対しては今年8月、大阪高裁が、「虚偽供述が誘発されかねない危険性の高いもので、今後繰り返されないようにすべき」として刑事裁判に付すよう決定を出しています。
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