順天堂大=東京都千代田区で2023年5月28日午後0時36分、原田啓之撮影

 加齢に伴い蓄積する老化細胞を薬で除去することを狙う国内初の臨床研究計画を、順天堂大の研究チームが15日、学内の倫理委員会に提出した。承認されれば2025年度にも患者への投与を始める。

 体内に蓄積した老化細胞は、炎症を起こす物質を出し続け、加齢に伴う病気を引き起こすと考えられている。このチームは「SGLT2阻害薬」という既存の糖尿病治療薬に、老化細胞を除去する働きがあるとみている。

 一部の老化細胞の表面には免疫の攻撃を逃れるたんぱく質がある。チームは、太らせたマウスにSGLT2阻害薬を投与する実験を実施。薬がこのたんぱく質の分解を促進し、免疫によって老化細胞の除去が進んだことを確認した。マウスの内臓脂肪にたまった老化細胞が減り、動脈硬化などの状態に改善がみられ、早老症マウスの寿命も延びていた。

 チームはこの成果を、5月30日付の英科学誌「ネイチャー・エイジング」(https://www.nature.com/articles/s43587-024-00642-y)で発表した。

 研究計画では、65歳以上の糖尿病などの患者50人を対象に、SGLT2阻害薬を1年間投与するグループと投与しないグループに分ける。遺伝子の発現を制御する「エピゲノム」の状態や細胞の遺伝子の損傷具合などから、生物学的な年齢を推計。どれほど加齢が抑制されたか、運動機能や認知機能に差が見られるかを検証する。

 これまでの老化細胞除去薬の候補は抗がん剤として使われているものが多かった。SGLT2阻害薬は抗がん剤に比べ、副作用の懸念も比較的少ないという。チームの南野徹教授(循環器内科学)は「安全性をしっかり検証しながら研究を進めたい」と話した。【寺町六花】

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