今月、宮崎空港で、突然、不発弾が爆発し、あわや大惨事となりました。

いまだ残る不発弾の脅威を知るため、番組では全国に4つしかない、不発弾処理の専門部隊を取材しました。

今月2日のこと、宮崎空港で飛行機が通過したわずか1分後。地面が爆発しました。

爆発したのは、滑走路の脇にある、誘導路。

幸いけが人はいなかったものの、大惨事になりかねない事態でした。

その原因となったのが…。

【国交省宮崎空港事務所・加藤浩介空港長】「不発弾によるものと判明しました。米国製の500ポンド爆弾であると自衛隊から報告をうけています」

「不発弾」です。

■2年前に大阪・吹田市ではマンション建設現場で不発弾が発見された

不発弾の探査などを行う会社は、こうした事例は珍しいものの、過去にもあったと話します。

【日本物理探鑛・田中剛さん】「数少ない事例として、工事で重機でたたいたりしなくても理由がわからないのに爆発するというのが、過去20例くらい知られている」

突然の爆発。

その脅威は、実は関西にも…。

【吹田市危機管理室 柴野将行参事】「ちょうどあそこに見えるマンションが発見された場所なんですよ。地中を掘削しているときに、不発弾が発見されたと言うような状況でした」

2年前、大阪府・吹田市では、マンションの建設現場で不発弾が発見。

周辺では住民の避難や、電車の運転取りやめが実施されるなど、生活に大きな影響が出ました。

さらに…。

【吹田市危機管理室 柴野将行参事】「約2500万円ほどの費用がかかっていると言うところが現状です」

対応にはお金もかかりますが、見つかってしまえば処理をせざるをえないのが実情。

行政側にとっては、見つからないことを祈るしかありません。

【吹田市危機管理室 柴野将行参事】「多くの関係機関が関わっていただいて、処理がなされるものですから、できることなら発見されることがないのが望ましいと思うところですけども」

■全国に4つしかない不発弾処理隊が京都に

戦後80年たっても、関西の地中に潜み続ける不発弾。

その対応にあたるプロフェッショナルが、京都にいます。

【川崎晋平記者】「全国に4つしかない不発弾処理隊。その1つは実は京都の桂にあります」

訪ねたのは、陸上自衛隊第103不発弾処理隊。

東は愛知県、西は山口県までをカバーする、専門部隊です。

【陸上自衛隊第103不発弾処理隊 武内優幸2等陸尉】「こちらが米国製500ポンド普通爆弾の模擬弾になります。宮崎空港で爆発したものと同タイプになる」

■安全な処理のために「信管」をどう取り外すかが最大のポイント

今回特別に、用意してもらった模擬不発弾で日頃行っている処理訓練を見せてもらいました。

【陸上自衛隊第103不発弾処理隊武内優幸2等陸尉】「爆弾全体が爆発するための一番はじめのきっかけの爆発を起こすのが、この部分と頭の部分それぞれ2つの信管になります」

不発弾の多くには、「信管」と呼ばれる「起爆装置」の役割を果たすものが取り付けられていて、信管に力が加わったときに中の爆薬が爆発するという仕組みになっているということです。

安全な処理のためにはこの「信管」をどう取り外すかが、最大のポイントとなります。

■処理訓練の様子に密着

【陸上自衛隊第103不発弾処理隊 武内優幸2等陸尉】「ただいまより米国製500ポンド普通爆弾の弾底信管離脱を実施する。ハンドル装着」
【隊員】「ハンドル装着。ハンドル装着よし」
【陸上自衛隊第103不発弾処理隊 武内優幸2等陸尉】「初動回せ」
【隊員】「初動回せ。初動よし」

隊員たちは、特殊な工具をつかって、慎重に信管を回転させていきます。

【陸上自衛隊第103不発弾処理隊 武内優幸2等陸尉】「1回転目、8分の1回転ずつずつ実装する。8分の1回転回せ」
【隊員】「8分の1回転回せ。8分の1よし」
【陸上自衛隊第103不発弾処理隊 武内優幸2等陸尉】「よし」

【陸上自衛隊第103不発弾処理隊 武内優幸2等陸尉】「8分の1回転回せ」
【隊員】「8分の1回転回せ。8分の3回転よし」
【陸上自衛隊第103不発弾処理隊 武内優幸2等陸尉】「よし。8分の1回転回せ」

【陸上自衛隊第103不発弾処理隊 武内優幸2等陸尉】「(不発弾は)やはり劣化しているので、回している途中にも固着して、これ以上回らないということも十分考えられるので、無理な力を加えないように、その場で一旦止まって原因を改善して、次にのぞんでいく」

【隊員】「ネジ山離脱」
【陸上自衛隊第103不発弾処理隊 武内優幸2等陸尉】「11回転ネジ山離脱。了解。静かに引き抜け」
【隊員】「静かに引き抜け。引き抜きよし」
【陸上自衛隊第103不発弾処理隊 武内優幸2等陸尉】「弾底信管離脱成功」

少なくとも30分以上かかるという信管の取り外し。

この作業が成功すると、ただちに爆発する危険性はなくなるということです。

【陸上自衛隊第103不発弾処理隊 武内優幸2等陸尉】「実際に爆弾を処理する時は隊員一同緊張感をもって臨みますが、日頃の訓練において不安をなくして本番に臨むよう常に訓練している」

■関西では大阪に不発弾が特に多い

昼夜問わず、年間で200件もの通報を受けるという処理隊。

関西で不発弾が特に多いのは大阪で、過去30年で24回もの不発弾の安全化作業が行われてきました。

背景にあるのは、戦時中の大阪大空襲です。

過去、大阪市で不発弾が見つかったのは、当時、兵器工場があった大阪城付近に集中しています。

【陸上自衛隊第103不発弾処理隊 武内優幸2等陸尉】「重要な交通インフラの橋などについては当然目標にもなりましたし、そこからまた爆弾が発見される可能性は大いにある」

■『時限式』の不発弾が埋まる地域は、九州・沖縄・関東の一部に絞られているという

同じような事態は起こりえるのか?不発弾の探査などを行う会社に聞くと…。

戦時中から地中に潜み続ける不発弾は、宮崎空港と同じように爆発する危険性があるのか?取材を続けると意外なことがわかってきました。

【日本物理探鑛・田中剛さん】「自然に爆発する地域というのがある程度特定の地域に絞られていて、九州地方、沖縄地方、あと関東の一部、実は(宮崎のように)自然爆発した地域と似たようなところに落とされた信管は、いわゆる『時限爆弾』といわれるやつで、長い時間がたった後に爆発するという仕組みの信管」

『時限式』の不発弾が埋まる地域のほうが、爆発のリスクが高いのではないか、と指摘しました。

【日本物理探鑛・田中剛さん】「(時限式)信管の機能が非常に特殊で、ちょっとの振動でも爆発すろという状態になっていたのかもしれない」

はるか地下に、ひっそりと埋まる不発弾。

今後、大惨事を招く事態は、本当に起きないのでしょうか。

(関西テレビ「newsランナー」2024年10月14日)

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