あしなが育英会の奨学生らの募金に応じる男性(右)=札幌市の札幌駅前で2024年4月20日午後1時6分、片野裕之撮影

 物価上昇、光熱費の値上げでまず切り詰めるのは食費。1日1食のときもあり、子どもは7キロ痩せた――。

 病気や災害などで親を亡くした子供たちを支援する「あしなが育英会」(東京都千代田区)が、会の奨学金を受けている高校生や大学生の保護者にアンケート調査したところ、9割超が「収入が物価上昇をカバーできていない」と回答した。もともと経済的に苦しい傾向にある遺児たちだが、物価高で生活が困窮を深めている実態が浮かんだ。

世帯所得300万円未満が7割

 あしなが育英会が7月18~31日、奨学金を受ける高校・大学生らの保護者5179人を対象にネットで調査し、3107人(60%)が回答した。保護者の81・1%は「母親」だった。

 回答した世帯の所得は300万円未満が72・3%。就労中と答えた世帯のうち、正社員は30・1%にとどまり、パート・アルバイト(42・3%)と契約・派遣(16・9%)といった非正規雇用が6割を占めた。

多くの遺児に奨学金を届けるよう、JR新宿駅前で募金への協力を呼びかける奨学生ら=あしなが育英会提供

 1年前と比べて収入が「増えた」と答えたのは14・5%だけだった。「減った」は28・2%、「変わらない」が57・3%で、8割超で収入が増えていない。

 一方で収入が物価上昇分をカバーできないと答えたのは94・2%に及んだ。上昇分をカバーできるだけの収入増があったと答えたのはわずか2・5%だった。

切り詰めて貧血や熱中症に…

 物価高を受けて、どんな出費を抑えているのか。最も多かったのは「食費」で52・8%。次いで「被服・美容代」(16・0%)、「光熱費・水道代」(13・9%)と続いた。

 回答者たちは自由記述欄に切実な声を書き連ねていた。

「光熱費の高騰で去年から私自身の食事を減らしたところ、貧血になり倒れてしまいました。ですが食費を削るしかありません」(大阪府、40代母親)。

「エアコンをつけないようにし、私と次男が熱中症になり苦しい思いをしました」(北海道、50代母親)。

JR品川駅で募金への協力を呼びかける奨学生=あしなが育英会提供

 がんを患っているのに治療費を工面できずに病状が悪化した保護者もいた。

 あしなが育英会の担当者は「命や健康が脅かされるほど追い詰められている家庭もある」と指摘する。15日に公示される衆院選を前に「状況を改善させる政策を」と訴えた。

資金不足で不支給が半数超に

 高校入学者向けにあしなが育英会が出している奨学金は申請者が急増している。2024年度は過去最多の3487人(8月22日時点)で前年度の約1・3倍だった。あしなが育英会が23年度から高校生支援を強化し、奨学金は返済不要の「全額給付」のみにしたことも背景にあるが、物価高による困窮も申請増に拍車をかけているという。

 24年度はあしなが育英会の資金不足で、高校奨学金の申請者の55・9%に当たる1949人を奨学生として採用できなかった。

 1人でも多くの遺児に奨学金が支給されるよう、奨学生らで組織するあしなが学生募金事務局は19日から各都道府県で街頭募金活動をする。詳しい場所や日時は、学生募金のホームページ(https://ashinaga-gakuseibokin.org/)で確認できる。【岡田英】

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