ノーベル平和賞の受賞が決まった日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の木戸季市(すえいち)事務局長(84)が12日、自宅のある岐阜市内で記者会見した。木戸さんは「受賞を知って、原爆の被害に遭った方々の姿がまず目に浮かんだ。彼らに『二度と被爆者を作らない』との誓いを改めて伝えたい」と語った。
木戸さんは1940年、長崎市で生まれた。5歳の時、爆心地から約2キロ離れた自宅前で被爆した。69年から岐阜市内の短大で社会論や歴史論を教えつつ、91年に岐阜県原爆被爆者の会を結成。2017年に日本被団協事務局長に就任し、核兵器禁止条約の発効(21年)に尽くした。
被爆した時、爆風で20メートルほど吹き飛ばされ、顔をやけどした。「あと1メートル先に飛ばされていたら川に落ちて死んでいた」。焦土と化した町並みや、路上や川に転がった死体を見て「こんな事は決してあってはならない」と幼心に感じた。
木戸さんたちの願いとは裏腹に、被爆国の日本は核兵器禁止条約を批准していない。だが今回の受賞決定で「多くの市民が核兵器をなくすという方向に進んでいる」と自信を深めたといい、「(批准への)希望を持っている」と語った。
ウクライナや中東で紛争が続き、核兵器使用のリスクが高まる。次代を担う若者へのメッセージとして「核兵器が人類に何をもたらしたかなど事実をきちんと見極め、あなた方自身で話し合い、(核廃絶を)実現させて」と呼びかけた。【太田圭介】
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