ノーベル平和賞受賞が決まり、原爆慰霊碑前で黙とうする広島県原爆被害者団体協議会の佐久間邦彦理事長(前列右から2人目)とメンバーら=広島市中区で2024年10月12日午前8時3分、北村隆夫撮影

 日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協、本部・東京都港区)のノーベル平和賞の受賞決定から一夜明けた12日、被爆地では平和や「核なき世界」への願いが改めて広がった。世界各地で戦火や核の脅威が絶えない中、この受賞をきっかけに核廃絶に向けた人類の覚悟が試されている。

 広島県原爆被害者団体協議会(県被団協)理事長の佐久間邦彦さん(79)はこの日朝、広島市中区の平和記念公園にある原爆慰霊碑を訪れ、亡くなった被爆者たちに受賞を報告して黙とうをささげた。

 「昨晩は興奮して寝られなかった。この晴天のような晴れやかな気持ちです」

 そう喜んだ佐久間さんも広島原爆投下後に降った「黒い雨」の被害を受け、長年にわたり核兵器の廃絶を訴え続けてきた一人だ。

 核兵器禁止条約の第2回締約国会議が米ニューヨークの国連本部で開かれた2023年11~12月、佐久間さんは渡米。在ニューヨーク日本総領事館前でマイクを握り、米国の水爆実験で島民が「死の灰」を浴びた太平洋・マーシャル諸島を念頭に「同じ苦しみを味わった人が広島にもいる。一緒になって核廃絶に向けて闘おう」と訴えた。

 被爆者たちは後遺症や理不尽な差別に苦しめられてきた。それでも平和な世界を強く願い、国内外に被爆の実相を発信してきた人が少なくない。

 ノルウェーのノーベル賞委員会は日本被団協の授賞理由で、被爆者について「筆舌に尽くしがたいものを描写し、核兵器によって引き起こされる理解を超えた苦痛を理解する手助けになっている」と言及した。

 佐久間さんは報道陣に「この受賞は亡くなった被爆者と一緒に喜びたい。次は慰霊碑に核が廃絶されたことを報告したい」と決意を語った。

 平和記念公園は普段と変わらず、早朝から原爆慰霊碑に手を合わせる人の姿が多く見られた。

 オーストラリアから家族旅行で来ていたジェローム・ラモスさん(40)は、日本被団協の平和賞受賞が決まった11日に広島入りした。「受賞は喜ばしいことだが、原爆で多くの方が犠牲になったことは悲しい歴史で複雑な気持ちだ。悲劇が二度と繰り返されないように、私たちができるのは、忘れないことと学ぶことだと思う」と語った。日本に滞在中、長崎も訪れる予定だという。

 小学6年の長女らと旅行で訪れた福岡県糸島市の平野雄三さん(40)は「昨晩テレビで受賞決定を知り、驚いた。私も戦争を知らない世代だが、この子たちが大きくなってからも伝えていく必要がある」と話した。【山本尚美、武市智菜実】

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